- 「意見照会書」や開示請求が届きました。特定されたということですか?
- まだ特定されてはいませんが、特定される一歩手前の段階です。プロバイダ(携帯会社・回線業者)があなたに意見を照会しているのは、投稿の被害者があなたの発信者情報(氏名・住所)の開示を求めているからです。ここでの対応次第で結果が変わるため、放置せず、回答期限までに対応方針を決めることが重要です。
- 無視すればやり過ごせますか?
- 無視は最も危険です。意見照会に回答しなくても、権利侵害が明らかならプロバイダや裁判所の判断で開示され、あなたは「争う姿勢すら示さなかった側」になります。開示後は慰謝料・調査費用の請求や刑事告訴に発展し得ます。回答期限内に、認めて謝罪・示談に向かうのか、争うのかを判断してください。
- 今から軽くする方法はありますか?
- あります。早い段階で投稿の削除・謝罪・示談に動くほど、賠償額の減額や、刑事の告訴取消しによる不起訴が期待できます。名誉毀損罪・侮辱罪は親告罪なので、示談が成立すれば刑事事件化を避けられる可能性が高まります。対応が遅れるほど選択肢が狭まります。
ある日突然、プロバイダ(携帯会社・回線業者)から「発信者情報開示に係る意見照会書」が届くと、多くの方が強い不安に襲われます。これは、あなたがネット上でした投稿について、被害を訴える相手があなたを特定しようとしていることを意味します。この記事では、開示請求をされた投稿者(発信者)側の立場から、いま自分がどの段階にいるのか、意見照会書にどう対応すべきか、開示されると何を請求されるのか、そして被害を最小限にする動き方までを、大阪の弁護士が現行法(情報流通プラットフォーム対処法)に基づいて解説します。
1開示請求されたら、今どの段階にいるのか
投稿者を特定する被害者側の手続きには、任意の開示請求と、裁判所の発信者情報開示命令の2つがあります。ただし、どちらの手続きでも当事者は被害者とプロバイダであり、あなた(発信者)は当事者ではありません。そのため、裁判所からあなたに直接書面が届くのではなく、プロバイダを通じて「意見照会書」という形であなたに連絡が来るのが基本です。
① まず届くのは、プロバイダからの「意見照会書」
あなたのもとに届くのは、多くの場合アクセスプロバイダ(携帯会社や回線業者)からの「発信者情報開示に係る意見照会書」です。これは情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)に基づく意見照会で、被害者があなたの発信者情報の開示を求めているため、プロバイダが開示するかどうかを判断する前に、あなたの意見を聞くものです。回答するかどうかは任意ですが、対応内容がその後を大きく左右します。回答期間はおおむね1〜2週間程度で設けられているのが一般的です。
② 意見照会の背後にある2つの手続き(任意 or 開示命令)
この意見照会の背後で、被害者は次のいずれかで手続きを進めています。裁判を使わない任意の開示請求か、裁判所の発信者情報開示命令(2022年10月に始まった非訟手続。他社の情報を提供させる提供命令や、ログ消去を禁じる消去禁止命令を使えます)です。ここで大切なのは、開示命令であっても、裁判所が期日呼出状や申立書の副本を送るのはプロバイダ(相手方)であって、あなたではないという点です。あなたは手続きの当事者ではないため、この段階で裁判所から直接あなたに書面が届くことは基本的にありません。あなた自身が裁判所から直接書面を受け取るのは、特定された後に損害賠償請求訴訟の被告として訴えられた段階です。
③ 「不同意」と答えていれば、結果が知らされる
あなたが意見照会に「開示に同意しない」と回答していたにもかかわらず開示命令が出て開示された場合、プロバイダにはその結果をあなたに告知する義務があります。つまり、開示されたかどうかは後から分かる仕組みです。なお、発信者情報開示命令には約1か月の異議期間があります。開示される情報には、氏名・住所のほか、電話番号やメールアドレスが含まれることがあります。
2意見照会書への3つの対応と、それぞれの結果
意見照会書には通常、回答期限(おおむね2週間程度)が設けられています。対応は「同意」「不同意(拒否)」「無回答」の3つですが、結果は次のように異なります。
| 対応 | その後の流れ | ポイント |
|---|---|---|
| ① 開示に同意する | おおむね1か月ほどで氏名・住所が相手に開示される | 争わず、削除・謝罪・示談で早期解決を目指す場合の選択 |
| ② 不同意(拒否)する | 相手は裁判(開示命令・訴訟)へ。権利侵害が明白なら裁判所判断で開示され得る | 正当な理由(人違い・正当な論評など)があるときに主張する |
| ③ 無回答で放置する | 争う姿勢を示さないまま、裁判所等の判断で開示される可能性が高い | 最もリスクが高い。心証も悪く、減額交渉の余地を自ら狭める |
回答書で「通る言い分」と「通らない言い訳」
不同意で争う場合、回答書の中身が結果を左右します。回答書は後に開示訴訟の証拠として扱われることもあるため、答弁書のつもりで書く必要があります。
3開示されると、何を請求されるのか
発信者情報が開示され、あなたの氏名・住所が相手に伝わると、次の3つの責任を問われる可能性があります。金額は投稿1件でも小さくないことがあります。
① 慰謝料(民事)
名誉毀損やプライバシー侵害による精神的損害の賠償です。個人に対する名誉毀損では、裁判例では概ね10万円〜50万円程度とされるものが多いですが、投稿が悪質・拡散した・営業上の損害が生じたといった事情で増額されます。
② 発信者を特定するためにかかった費用(調査費用)
見落とされがちですが、相手があなたを特定するために使った費用(発信者情報開示にかかった弁護士費用など)を、損害として請求されることがあります。この調査費用が慰謝料本体を上回ることも珍しくなく、投稿1件でも総額が数十万円規模になり得ます。裁判例でも、慰謝料を上回る発信者特定の費用が、社会通念上相当な範囲として相当因果関係のある損害と認められた例があります。「たった一言の投稿なのに」と驚かれる方が多いのは、この調査費用が加わるためです。
③ 刑事責任(名誉毀損罪・侮辱罪)
投稿の内容によっては刑事責任を問われます。公然と事実を摘示して社会的評価を下げれば名誉毀損罪(刑法230条・3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)、事実を示さず侮辱すれば侮辱罪(刑法231条)にあたり得ます。侮辱罪は2022年7月に厳罰化され、法定刑に拘禁刑・罰金が加わり、公訴時効も3年に延びました。いずれも親告罪(刑法232条)なので、被害者が告訴しなければ起訴されず、示談で告訴が取り消されれば不起訴の可能性が高まります。
4早く動くほど、被害は軽くできる
開示請求をされた側にとって、最大の分かれ道は「争うか、認めて早期に解決するか」です。投稿に正当性がなく責任を免れないケースでは、早い段階で削除・謝罪・示談に動くほど、金銭的にも刑事的にも負担を小さくできます。
5やってはいけないNG対応
6「時効で消えるのを待つ」は危険
「放っておけば時効で消えるのでは」と考える方がいますが、待つ戦略は投稿者側に不利に働きます。損害賠償請求権の消滅時効は、民法724条により被害者が損害および加害者(あなた)を知った時から3年、不法行為の時から20年です。開示請求が来ている時点で、被害者はまさにあなたを特定して「知ろう」としている最中であり、開示されれば起算点が動きます。時効の完成を待つ間に開示・提訴されれば、時効は成立しません。むしろ、対応を先延ばしにするほど示談の余地が狭まり、刑事の告訴期間内に告訴される可能性も残ります。「待つ」より「早く動く」ほうが、結果的に負担は軽くなります。
7弁護士に依頼するメリットと費用の目安
開示請求をされた側が弁護士に依頼すると、次の対応を一貫して任せられます。
| 場面 | 弁護士ができること |
|---|---|
| 意見照会書への回答 | 同意・不同意の判断と、法的に的確な回答書の作成 |
| 開示命令・訴訟への対応 | 争える事案かの見極めと、裁判所での主張・反論 |
| 示談交渉 | 相手方との交渉、賠償額の減額、秘密保持・再発防止条項の取り決め |
| 刑事対応 | 告訴取消しに向けた示談、捜査機関への対応 |
費用は事案により異なりますが、意見照会への対応・示談交渉で着手金・報酬あわせて数十万円程度が一般的な目安です。争う場合や訴訟に進む場合は別途費用がかかります。もっとも、調査費用まで含めた相手方の請求総額や、刑事事件化のリスクを抑えられれば、依頼する意味は十分にあります。
※ 上記は一般的な目安です。当事務所では初回相談30分無料で、見通しと総額の目安をご説明します。
8よくあるご質問
9あわせて確認したい
▶ ネット誹謗中傷の削除・損害賠償請求(削除・発信者特定・損害賠償・刑事告訴までの全体像と弁護士費用の一覧)
▶ 発信者情報開示請求とは?投稿者を特定する手続き(請求する側から見た開示手続きの流れ。裏返せば、あなたに何が起きているかが分かります)
▶ ネット誹謗中傷の慰謝料相場(開示後に請求され得る慰謝料の相場と考え方)
▶ 名誉毀損・侮辱の刑事告訴(刑事責任の要件と、親告罪・示談による不起訴の仕組み)
開示請求をされたときは、回答期限までに「争うか、早期に解決するか」を見極めることが何より大切です。対応が早いほど、賠償額も刑事リスクも抑えられます。まずは無料相談で、あなたの投稿について最適な進め方をご説明します。
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※本記事は一般的な情報提供であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。手続や運用は変更されることがあります。掲載した判例・条文・統計は公表されたものに基づきますが、個別の当てはめは弁護士にご相談ください。監修:難波みなみ法律事務所 代表弁護士 南宜孝(大阪弁護士会)。
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