コラム
更新日: 2026.08.31

開示請求されたら|投稿者側の対処法を弁護士が解説

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。大阪弁護士会所属(登録番号49544)、大阪中小企業診断士会所属(登録番号 420113)、幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

開示請求が届いたら 投稿者側の対処法
まず結論
「意見照会書」や開示請求が届きました。特定されたということですか?
まだ特定されてはいませんが、特定される一歩手前の段階です。プロバイダ(携帯会社・回線業者)があなたに意見を照会しているのは、投稿の被害者があなたの発信者情報(氏名・住所)の開示を求めているからです。ここでの対応次第で結果が変わるため、放置せず、回答期限までに対応方針を決めることが重要です。
無視すればやり過ごせますか?
無視は最も危険です。意見照会に回答しなくても、権利侵害が明らかならプロバイダや裁判所の判断で開示され、あなたは「争う姿勢すら示さなかった側」になります。開示後は慰謝料・調査費用の請求や刑事告訴に発展し得ます。回答期限内に、認めて謝罪・示談に向かうのか、争うのかを判断してください。
今から軽くする方法はありますか?
あります。早い段階で投稿の削除・謝罪・示談に動くほど、賠償額の減額や、刑事の告訴取消しによる不起訴が期待できます。名誉毀損罪・侮辱罪は親告罪なので、示談が成立すれば刑事事件化を避けられる可能性が高まります。対応が遅れるほど選択肢が狭まります。

ある日突然、プロバイダ(携帯会社・回線業者)から「発信者情報開示に係る意見照会書」が届くと、多くの方が強い不安に襲われます。これは、あなたがネット上でした投稿について、被害を訴える相手があなたを特定しようとしていることを意味します。この記事では、開示請求をされた投稿者(発信者)側の立場から、いま自分がどの段階にいるのか、意見照会書にどう対応すべきか、開示されると何を請求されるのか、そして被害を最小限にする動き方までを、大阪の弁護士が現行法(情報流通プラットフォーム対処法)に基づいて解説します。

1開示請求されたら、今どの段階にいるのか

投稿者を特定する被害者側の手続きには、任意の開示請求と、裁判所の発信者情報開示命令の2つがあります。ただし、どちらの手続きでも当事者は被害者とプロバイダであり、あなた(発信者)は当事者ではありません。そのため、裁判所からあなたに直接書面が届くのではなく、プロバイダを通じて「意見照会書」という形であなたに連絡が来るのが基本です。

① まず届くのは、プロバイダからの「意見照会書」

あなたのもとに届くのは、多くの場合アクセスプロバイダ(携帯会社や回線業者)からの「発信者情報開示に係る意見照会書」です。これは情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)に基づく意見照会で、被害者があなたの発信者情報の開示を求めているため、プロバイダが開示するかどうかを判断する前に、あなたの意見を聞くものです。回答するかどうかは任意ですが、対応内容がその後を大きく左右します。回答期間はおおむね1〜2週間程度で設けられているのが一般的です。

② 意見照会の背後にある2つの手続き(任意 or 開示命令)

この意見照会の背後で、被害者は次のいずれかで手続きを進めています。裁判を使わない任意の開示請求か、裁判所の発信者情報開示命令(2022年10月に始まった非訟手続。他社の情報を提供させる提供命令や、ログ消去を禁じる消去禁止命令を使えます)です。ここで大切なのは、開示命令であっても、裁判所が期日呼出状や申立書の副本を送るのはプロバイダ(相手方)であって、あなたではないという点です。あなたは手続きの当事者ではないため、この段階で裁判所から直接あなたに書面が届くことは基本的にありません。あなた自身が裁判所から直接書面を受け取るのは、特定された後に損害賠償請求訴訟の被告として訴えられた段階です。

③ 「不同意」と答えていれば、結果が知らされる

あなたが意見照会に「開示に同意しない」と回答していたにもかかわらず開示命令が出て開示された場合、プロバイダにはその結果をあなたに告知する義務があります。つまり、開示されたかどうかは後から分かる仕組みです。なお、発信者情報開示命令には約1か月の異議期間があります。開示される情報には、氏名・住所のほか、電話番号やメールアドレスが含まれることがあります。

共通して言えることどちらの手続きでも、相手は本気で特定・責任追及に動いているということです。「軽い気持ちの一言」でも、名誉毀損やプライバシー侵害と評価されれば手続きは進みます。まずは自分の投稿を特定し(どのサイトの・いつの・どの投稿か)、証拠として残しておくとともに、意見照会書の回答期限までに対応方針を固めることが大切です。

2意見照会書への3つの対応と、それぞれの結果

意見照会書には通常、回答期限(おおむね2週間程度)が設けられています。対応は「同意」「不同意(拒否)」「無回答」の3つですが、結果は次のように異なります。

対応その後の流れポイント
① 開示に同意するおおむね1か月ほどで氏名・住所が相手に開示される争わず、削除・謝罪・示談で早期解決を目指す場合の選択
② 不同意(拒否)する相手は裁判(開示命令・訴訟)へ。権利侵害が明白なら裁判所判断で開示され得る正当な理由(人違い・正当な論評など)があるときに主張する
③ 無回答で放置する争う姿勢を示さないまま、裁判所等の判断で開示される可能性が高い最もリスクが高い。心証も悪く、減額交渉の余地を自ら狭める
拒否すれば必ず守られるわけではない意見照会はあくまで意見を聞く手続きで、あなたが不同意と回答しても、権利侵害が明らかならプロバイダや裁判所の判断で開示されます。逆に、正当な論評にとどまる・人違いであるといった事情があれば、その理由を筋道立てて回答することに意味があります。同意・不同意のどちらが有利かは投稿内容によって変わるため、回答する前に一度弁護士に相談するのが安全です。

回答書で「通る言い分」と「通らない言い訳」

不同意で争う場合、回答書の中身が結果を左右します。回答書は後に開示訴訟の証拠として扱われることもあるため、答弁書のつもりで書く必要があります。

通らない言い訳/争えるポイント「自分は書いていない」「身に覚えがない」「家族や従業員が使った」といった言い訳は、原則として通りません。契約者と投稿者は同一だと推認されるためです。一方で争える可能性があるのは、投稿があなたを指すと分からない(同定可能性がない)、名誉毀損や名誉感情の侵害にあたらない、といった「権利侵害の明白性」を否定できる場合や、開示されると不当な攻撃が予想されるといった事情がある場合です。これらは証拠を添えて具体的に述べる必要があり、回答書の作成は弁護士に相談するのが安全です。

3開示されると、何を請求されるのか

発信者情報が開示され、あなたの氏名・住所が相手に伝わると、次の3つの責任を問われる可能性があります。金額は投稿1件でも小さくないことがあります。

① 慰謝料(民事)

名誉毀損やプライバシー侵害による精神的損害の賠償です。個人に対する名誉毀損では、裁判例では概ね10万円〜50万円程度とされるものが多いですが、投稿が悪質・拡散した・営業上の損害が生じたといった事情で増額されます。

② 発信者を特定するためにかかった費用(調査費用)

見落とされがちですが、相手があなたを特定するために使った費用(発信者情報開示にかかった弁護士費用など)を、損害として請求されることがあります。この調査費用が慰謝料本体を上回ることも珍しくなく、投稿1件でも総額が数十万円規模になり得ます。裁判例でも、慰謝料を上回る発信者特定の費用が、社会通念上相当な範囲として相当因果関係のある損害と認められた例があります。「たった一言の投稿なのに」と驚かれる方が多いのは、この調査費用が加わるためです。

③ 刑事責任(名誉毀損罪・侮辱罪)

投稿の内容によっては刑事責任を問われます。公然と事実を摘示して社会的評価を下げれば名誉毀損罪(刑法230条・3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)、事実を示さず侮辱すれば侮辱罪(刑法231条)にあたり得ます。侮辱罪は2022年7月に厳罰化され、法定刑に拘禁刑・罰金が加わり、公訴時効も3年に延びました。いずれも親告罪(刑法232条)なので、被害者が告訴しなければ起訴されず、示談で告訴が取り消されれば不起訴の可能性が高まります。

4早く動くほど、被害は軽くできる

開示請求をされた側にとって、最大の分かれ道は「争うか、認めて早期に解決するか」です。投稿に正当性がなく責任を免れないケースでは、早い段階で削除・謝罪・示談に動くほど、金銭的にも刑事的にも負担を小さくできます。

STEP1 自分の投稿を確認・保全どのサイトの、いつの、どの投稿が問題にされているのかを特定し、スクリーンショット等で控えます(削除して証拠を消すのは逆効果。詳細は次章)。
STEP2 弁護士に相談し方針を決める投稿に正当性があり争えるのか、責任を認めて示談に向かうのかを判断します。回答期限があるため早めに。
STEP3 削除・謝罪の意思を示す責任を認める場合は、投稿の削除や謝罪の意向を相手方に伝え、誠意ある対応を示します。
STEP4 示談交渉賠償額・再発防止・秘密保持などを取り決めて示談します。示談金に法的な上限はありませんが、早期・非公開で解決できる利点があります。
STEP5 示談成立・解決示談が成立すれば民事は解決し、刑事も告訴取消し(または不告訴)により不起訴が期待できます。
弁護士の視点「認めて謝れば負けだ」と身構える方もいますが、責任を免れない事案では、争って敗訴・有罪になるより、早期の示談で総額と刑事リスクを抑えるほうが合理的なことが多いです。逆に、投稿が正当な論評の範囲だったり人違いだったりする場合は、安易に同意せず争うべきです。この見極めこそ、弁護士に相談する最大の意味です。

5やってはいけないNG対応

かえって不利になる行動投稿を慌てて削除して証拠隠滅を図る…ログの消去禁止命令が出ていることもあり、隠そうとした事実が心証を悪化させます。保全のうえ、削除は方針を決めてから。/② 相手(被害者)に直接連絡・反論する…感情的なやり取りは新たなトラブルや二次被害を生みます。交渉は弁護士を通すのが安全です。/③ 報復のような投稿を重ねる…被害を拡大させ、悪質性を高めるだけです。/④ 意見照会書を無視する…期限を過ぎれば、争う機会も減額交渉の糸口も失います。

6「時効で消えるのを待つ」は危険

「放っておけば時効で消えるのでは」と考える方がいますが、待つ戦略は投稿者側に不利に働きます。損害賠償請求権の消滅時効は、民法724条により被害者が損害および加害者(あなた)を知った時から3年、不法行為の時から20年です。開示請求が来ている時点で、被害者はまさにあなたを特定して「知ろう」としている最中であり、開示されれば起算点が動きます。時効の完成を待つ間に開示・提訴されれば、時効は成立しません。むしろ、対応を先延ばしにするほど示談の余地が狭まり、刑事の告訴期間内に告訴される可能性も残ります。「待つ」より「早く動く」ほうが、結果的に負担は軽くなります。

7弁護士に依頼するメリットと費用の目安

開示請求をされた側が弁護士に依頼すると、次の対応を一貫して任せられます。

場面弁護士ができること
意見照会書への回答同意・不同意の判断と、法的に的確な回答書の作成
開示命令・訴訟への対応争える事案かの見極めと、裁判所での主張・反論
示談交渉相手方との交渉、賠償額の減額、秘密保持・再発防止条項の取り決め
刑事対応告訴取消しに向けた示談、捜査機関への対応

費用は事案により異なりますが、意見照会への対応・示談交渉で着手金・報酬あわせて数十万円程度が一般的な目安です。争う場合や訴訟に進む場合は別途費用がかかります。もっとも、調査費用まで含めた相手方の請求総額や、刑事事件化のリスクを抑えられれば、依頼する意味は十分にあります

※ 上記は一般的な目安です。当事務所では初回相談30分無料で、見通しと総額の目安をご説明します。

8よくあるご質問

Q. 意見照会書が届いたら、もう特定されているのですか?
まだ特定されていません。意見照会は開示の前段階で、あなたの意見を聞く手続きです。ただし特定の一歩手前であり、対応を誤ると開示に進みます。回答期限までに方針を決めてください。
Q. 意見照会書は無視してもいいですか?
無視は最も危険です。回答しなくても権利侵害が明らかなら開示され、あなたは争う姿勢を示さなかった側になります。減額交渉の余地も狭まるため、期限内に対応方針を決めるべきです。
Q. 開示に同意すると、すぐ氏名・住所が相手に伝わりますか?
同意した場合、おおむね1か月ほどでプロバイダから相手に発信者情報が開示されます。不同意でも、裁判で権利侵害が認められれば、提訴後3か月〜半年ほどで開示されることがあります。
Q. 投稿1件だけでも、いくら請求されますか?
慰謝料は個人への名誉毀損で概ね10万〜50万円程度の裁判例が多いですが、これに相手の特定にかかった調査費用(開示の弁護士費用など)が加わり、投稿1件でも総額が数十万円規模になり得ます。悪質・拡散した投稿ではさらに増えます。
Q. 慌てて投稿を削除してもいいですか?
おすすめしません。証拠隠滅とみなされて心証を悪化させ、消去禁止命令が出ていることもあります。まずは投稿を保全し、削除するかどうかは対応方針を決めてから判断してください。
Q. 逮捕されることはありますか?
名誉毀損罪・侮辱罪は在宅で捜査されることが多く、投稿1件で直ちに逮捕されるのは例外的です。ただし悪質・継続する事案では刑事事件化し得ます。親告罪なので、示談で告訴が取り消されれば不起訴が期待できます。
Q. 示談すれば刑事事件にならずに済みますか?
可能性が高まります。名誉毀損罪・侮辱罪は親告罪で、被害者の告訴がなければ起訴できません。示談で告訴を取り消してもらえれば起訴されず、まだ告訴されていなければ告訴を思いとどまってもらえることもあります。
Q. 相手に直接謝りに行ってもいいですか?
直接連絡は避けてください。感情的なやり取りで新たなトラブルを招いたり、不利な言質を取られたりする恐れがあります。謝罪や示談の意向は、弁護士を通じて伝えるのが安全です。

9あわせて確認したい

開示請求をされたときは、回答期限までに「争うか、早期に解決するか」を見極めることが何より大切です。対応が早いほど、賠償額も刑事リスクも抑えられます。まずは無料相談で、あなたの投稿について最適な進め方をご説明します。

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※本記事は一般的な情報提供であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。手続や運用は変更されることがあります。掲載した判例・条文・統計は公表されたものに基づきますが、個別の当てはめは弁護士にご相談ください。監修:難波みなみ法律事務所 代表弁護士 南宜孝(大阪弁護士会)。

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