コラム
更新日: 2026.08.31

ネット誹謗中傷の慰謝料相場|名誉毀損・侮辱の金額を弁護士が解説

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。大阪弁護士会所属(登録番号49544)、大阪中小企業診断士会所属(登録番号 420113)、幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

ネット誹謗中傷の慰謝料相場(名誉毀損・侮辱の金額目安)を大阪の弁護士が解説
まず結論
ネット誹謗中傷の慰謝料はいくらですか?
個人が受けた名誉毀損では10万〜50万円が目安です。実際に裁判所が認めた金額は、ネット上の事案で中央値30万円・平均47万円、約半数が30万円未満というのが実情です(法務省・令和8年調査)。悪質で拡散が大きい事案では200万〜349万円が認められた例もあります。
何によって金額が決まりますか?
投稿の拡散度・悪質性・内容の虚偽性・被害の実害で決まります。不特定多数に広く拡散し、虚偽で悪質なほど高額になります。逆に、内容に具体性がなく謝罪があると減額されます。
慰謝料以外にも請求できますか?
できます。慰謝料に加えて、弁護士費用(認容額の約1割)と、匿名投稿者を特定するための調査費用を加害者に請求できるのが原則です。法人では営業損害を加えられることもあります。

インターネット上の誹謗中傷で受けた精神的苦痛は、慰謝料(損害賠償)として金銭で請求できます。もっとも「いくら取れるのか」は、名誉毀損・侮辱・プライバシー侵害のどれにあたるか、どれだけ拡散し悪質だったかで大きく変わります。この記事では、相場の目安・実際に裁判所が認めた金額・実際の裁判例・増額の進め方までを、大阪の弁護士がデータと判例に基づいて解説します。

13つの類型と成立要件(何が誹謗中傷か)

ネット上の権利侵害は、大きく次の3つに分かれます。どれにあたるかで慰謝料の水準が変わるため、まず自分のケースがどれかを見極めることが出発点です。

① 名誉毀損(名誉権の侵害)

具体的な事実を示して、人の社会的評価を低下させる投稿です(最大判昭和61年6月11日・北方ジャーナル事件)。「Aは客の金を横領している」「B社は詐欺的な営業をしている」など。事実が真実でない限り、投稿者に責任が生じます。慰謝料の水準が最も高くなる類型です。

② 侮辱(名誉感情の侵害)

具体的事実は示さないが、社会通念上許される限度を超える侮辱行為です(最判平成22年4月13日)。「バカ」「頭がおかしい」といった抽象的な悪口が典型で、慰謝料は数万円〜10万円程度と低めです。

③ プライバシー侵害

公開されたくない私生活上の事実を暴露する投稿です。住所・病歴・家族関係・性的な事柄などが対象で、内容の秘匿性が高いほど高額になります。あわせて肖像権侵害や「なりすまし」による人格権侵害が認められることもあります。

2慰謝料の相場(被侵害利益別)

類型ごとの慰謝料の目安は次のとおりです。

類型相場(目安)ポイント
名誉毀損(個人)10万〜50万円具体的事実で社会的評価を下げるもの
名誉毀損(法人)50万〜100万円信用毀損・営業損害を伴うことがある
侮辱(名誉感情)1万〜数十万円事実の摘示を伴わない抽象的な悪口。多くは10万円前後
プライバシー侵害10万〜50万円私生活・個人情報の暴露。性的内容は100万円超も
重大・悪質な事案200万〜349万円社会的地位の高い人物への執拗・広範な攻撃など

上記は請求時の目安です。実際の認容額は個別事情で変動します(次項参照)。

3実際に裁判所が認めた金額(データ)

法務省が令和8年に公表した調査(インターネット上の名誉権侵害等の損害賠償額に関する調査報告書。裁判例203件を分析)によると、ネット上の名誉毀損で実際に認容された慰謝料は中央値30万円・平均47万円で、約半数(46.6%)が30万円未満でした。もっとも、公表裁判例を分析した文献では名誉毀損の中央値を50万円前後とするものもあり、調査の対象や年代によって30万〜50万円の幅があります。相場の「上限」ではなく「中央値」を基準に、控えめに見通しを立てることが大切です。

30万円認容額の中央値(ネット)
47万円認容額の平均値(ネット)
約半数30万円未満の割合
区分中央値平均値最高額
ネット上の名誉毀損 全体30万円47万円349万円
SNS(X/Twitter等)約32万円約54万円250万円
電子掲示板(2ch/5ch等)約22万円約27万円100万円
侮辱(名誉感情のみ)約15万円約23万円70万円

※ ネット上の慰謝料は、新聞・雑誌などマスメディア(平均約161万円)と比べて概ね3分の1程度の水準にとどまる傾向があります。これは、匿名・不特定多数の投稿は信用性が低いと受け止められやすいことなどが理由とされています。

4実際の裁判例(高額・低額)

金額のイメージを掴むため、実際の裁判例を紹介します(いずれも公表裁判例)。

高額が認められた例

349万円複数媒体で千数百回の投稿
心理援助職の被害者に対し、著作権侵害・つきまとい・精神障害などの投稿を、ブログ・Twitter等で合計千数百回にわたり継続。被害者が資格を失う結果に至った点が重視された。
東京地判令和5年6月9日
300万円研究不正の摘示
大学教授に対し、研究データを捏造・改ざんした、業績を詐称したなどの事実を、自身のホームページに繰り返し掲載した事案。
東京地判平成24年11月8日
250万円著名人による拡散力の大きい投稿
80万人超のフォロワーを持つ著名な医師が、芸術監督を務める被害者について社会的評価を下げる投稿を複数回。発信者の社会的影響力と拡散力が考慮された。
東京地判令和5年12月20日

低額にとどまった例

5万円掲示板での抽象的な侮辱
勤務先の女性に対し、電子掲示板に「知恵遅れ」「頭おかしい」などと投稿した名誉感情侵害の事案。表現は悪質だが具体的事実の摘示はないと評価された。
東京地判令和4年3月8日
3万円短文の名誉感情侵害
フォロワーの多いアカウントによる投稿だが、内容が短文で、被害者の人格的評価を具体的に低下させるものではないとされた事案。
東京地判令和4年8月24日
ここがポイント高額事案は「拡散の大きさ」「投稿回数の多さ」「発信者の影響力」「被害の深刻さ(資格喪失など)」が揃っています。逆に、単発・抽象的な悪口は数万円にとどまります。金額を左右するのは投稿の”量と質”です。

5慰謝料以外に請求できるもの(損害賠償の内訳)

加害者に請求できるのは慰謝料だけではありません。実際の裁判でも、慰謝料に次の費目を上乗せして認容されています。

費目目安内容
慰謝料相場の項目参照精神的苦痛に対する賠償
弁護士費用認容慰謝料の約1割不法行為と相当因果関係のある範囲で加害者に請求可
調査費用(特定費用)実費相当発信者情報開示など、投稿者の特定に要した費用
営業損害・逸失利益事案による主に法人。売上減少などを立証できた場合

たとえば裁判例では、慰謝料180万円+弁護士費用20万円を認めたもの、なりすまし投稿で慰謝料に発信者情報の取得費用を加えて認めたものなどがあります。「慰謝料が低くても、特定にかけた費用を回収できる」という視点が重要です。

6慰謝料が増える要因・減る要因

増額する要因① 不特定多数に広く拡散した(拡散の程度)/② 表現が強度・悪質である/③ 内容が虚偽で、真実性の証明ができない/④ 社会的評価の低下が大きい/⑤ 精神的苦痛が大きい/⑥ 生活・仕事に具体的な支障が生じた/⑦ 投稿の回数が多い・執拗である。
減額する要因① 投稿内容に具体性がない/② 加害者が謝罪し事後的に対応した/③ ほとんど拡散していない/④ 社会的評価の低下が小さい/⑤ 表現の権利侵害性が強くない。

裁判所は、これらの事情を総合して金額を決めます。法務省調査でも、増額方向で最も多く挙げられたのは「不特定多数が認識した(拡散)」と「表現が強度・悪質」でした。

7慰謝料を増やすための具体的な進め方

相場は目安にすぎず、準備次第で認められる金額は変わります。増額のためにやるべきことは次のとおりです。

1. 証拠を早期に保全する

投稿のURL・スクリーンショット(日時・アカウント名が写るように)・魚拓を、削除される前に確保します。証拠がなければ拡散の程度も悪質性も立証できません。

2. 拡散・被害の実害を記録する

リツイート数・閲覧数・まとめサイトへの転載、取引の打切り・退職・体調不良(診断書)など、社会的評価の低下と実害を示す資料を集めます。これらが増額要因の立証材料になります。

3. 複数投稿・複数媒体をまとめて主張する

投稿が多数・複数媒体にわたるほど慰謝料は上がります。一つひとつの投稿を漏れなく特定し、回数と範囲を主張します。

8慰謝料請求までの流れ

STEP1 証拠の保全
投稿のURL・スクリーンショット・投稿日時を確保。削除される前が重要。
STEP2 発信者の特定
匿名投稿は、発信者情報開示請求でSNS事業者・プロバイダから投稿者を特定(4〜6か月が目安)。
STEP3 損害賠償請求(交渉)
特定した相手に、慰謝料+弁護士費用+調査費用を請求。示談で解決することも多い。
STEP4 訴訟
任意の支払いに応じない場合は損害賠償請求訴訟へ。判決で金額が確定する。

匿名投稿では、まず「特定」ができなければ慰謝料を請求できません。特定に必要なアクセスログが消える前に動くことが最優先です。

9時効とタイムリミット

慰謝料(損害賠償)請求権には時効があります。加害者と損害を知った時から3年、投稿の時から20年で時効消滅します(民法724条)。匿名投稿では、まず発信者を特定しなければ加害者が分からないため、特定手続に必要なアクセスログ(多くのプロバイダで概ね3か月〜半年で消去)が消える前に動くことが重要です。

期限内容
3か月〜半年アクセスログの保存期間の目安(特定のタイムリミット)
3年慰謝料請求権の消滅時効(加害者・損害を知った時から)
20年投稿時からの期間制限
ポイント時効の起算点は「加害者を知った時」です。匿名投稿では発信者が判明した時から3年と考えられますが、争いになり得るため、早期の着手が安全です。

10よくあるご質問

Q. 慰謝料の相場より高く請求できますか?
できます。拡散が広い、虚偽で悪質、被害が深刻といった増額要因があれば、相場を超える金額が認められることがあります(実際に349万円を認めた例もあります)。まず証拠を保全し、増額要因を具体的に立証することが重要です。
Q. 慰謝料が数万円では割に合わないのでは?
慰謝料自体は低額でも、弁護士費用(認容額の約1割)と発信者を特定するための調査費用を加害者に請求できるのが原則です。金銭回収だけでなく、投稿の削除・再発防止・刑事責任の追及も併せて検討します。
Q. 相手が特定できなくても慰謝料は取れますか?
取れません。匿名投稿では、まず発信者情報開示請求で投稿者を特定する必要があります。特定できて初めて、その相手に慰謝料を請求できます。
Q. 法人(会社・お店)でも慰謝料を請求できますか?
できます。法人には精神的苦痛はありませんが、無形の損害(信用毀損)に対する賠償として、名誉毀損では50万〜100万円程度が認められる例があります。売上減少などの営業損害を別途請求できる場合もあります。
Q. 「バカ」「気持ち悪い」程度でも慰謝料は取れますか?
取れる可能性はありますが、金額は低めです。具体的事実を伴わない抽象的な悪口は「侮辱(名誉感情侵害)」にあたり、相場は多くが10万円前後です。ただし執拗・多数回であれば数十万円に及ぶこともあります。
Q. 慰謝料の請求に時効はありますか?
あります。加害者と損害を知った時から3年、投稿の時から20年で時効消滅します(民法724条)。匿名投稿はログ消去のリスクもあるため、早期に着手してください。
Q. 慰謝料の請求から回収までどのくらいかかりますか?
匿名投稿では、発信者の特定に4〜6か月、その後の損害賠償請求で数か月が目安です。相手が任意に支払わない場合は訴訟となり、さらに期間を要します。
Q. 弁護士に依頼する費用はいくらですか?
当事務所では、損害賠償請求は着手金15万〜30万円・報酬金は回収額の10〜16%が目安です。発信者の特定から一貫して依頼する場合の費用は、無料相談で総額の見通しをご説明します。

誹謗中傷の慰謝料・損害賠償をご検討の方は、大阪でネット誹謗中傷の慰謝料・損害賠償請求に強い弁護士に相談する。大阪・なんばで誹謗中傷・削除・開示請求に対応、初回相談30分無料・土日祝/夜間対応で承ります。

11あわせて確認したい

誹謗中傷の慰謝料は、証拠の保全と増額要因の主張で結果が変わります。ログが消える前に、まずは無料相談で見通しをご説明します。

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※本記事は一般的な情報提供であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。掲載した裁判例は公表裁判例に基づきますが、事案の詳細や上級審での変更の有無は個別にご確認ください。具体的な見通しは弁護士にご相談ください。監修:難波みなみ法律事務所 代表弁護士 南宜孝(大阪弁護士会)。

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