Q. 検査の見落としがあったら、損害賠償できますか?
検査を怠ったこと、または検査結果を見落としたことに注意義務違反(過失)があり、それによって発見・治療が遅れて被害が生じたといえる場合には、損害賠償が認められます。悪い結果が出たことだけでは足りません。
Q. どんな「検査の見落とし」がありますか?
大きく、①必要な検査をしなかった、②画像や検体の異常を読み違えた、③検査は行ったが結果が主治医や患者に伝わらず放置された、④転科・転院の際に要注意の所見が引き継がれなかった、の4つです。
Q. まず何をすべきですか?
カルテ・検査結果・画像データ・読影報告書を確保することが最優先です。時間が経つと入手が難しくなり、時効もあります。早めに弁護士へご相談ください。
「別の病気で通院していたのに、検査を受けていれば早く見つかったはずのがんが手遅れになった」「CTを撮っていたのに、その結果が主治医に伝わっていなかった」――検査にまつわる見落としは、深刻な結果につながることがあります。この記事では、検査・検査結果の見落としがどのような場面で問題になるのか、とくに見落とされやすい「結果の伝わらなさ」の落とし穴、そして誰が責任を負うのかを、患者側の立場から弁護士が解説します。なお、がんの見落としそのものの賠償の考え方は、誤診・がんの見落としの記事で詳しく解説しています。
検査の見落としとは
検査の見落としとは、必要な検査を怠ったり、実施した検査の結果を適切に確認・活用しなかったりしたために、病気の発見や治療が遅れて患者に被害が生じることをいいます。悪い結果が生じたことだけで当然に過誤になるわけではなく、損害賠償が認められるには、検査に関する注意義務の違反(過失)と、それによって被害が生じたこと(因果関係)が必要です。
検査の見落としの4つの類型
検査の見落としは、大きく次の4つの場面に分けて考えると整理しやすくなります。
| 類型 | 内容の例 |
|---|---|
| ① 検査をしなかった | 症状や所見から疑うべき病気があるのに、必要な検査(CT・MRI・内視鏡・生検・血液の再検査など)を実施しなかった。 |
| ② 読み違えた(読影ミス) | 撮影した画像や採取した検体にある異常を見落とした、あるいは軽く評価しすぎた。 |
| ③ 結果が伝わらなかった | 検査は行ったが、結果(とくに放射線科医の読影報告書)を主治医が確認せず、あるいは患者に知らされないまま放置された。 |
| ④ 引き継がれなかった | 転科・転院・退院のときに、「要精密検査」などの大切な所見が、次の担当者に引き継がれずに放置された。 |
このうち、②③④は「検査自体は行われていたのに、その結果が活かされなかった」という点で共通します。次に、とくに見落とされやすい③について詳しく見ていきます。
見落とされやすい「検査結果の伝わらなさ」
近年とくに問題になっているのが、検査は正しく行われ、放射線科医が読影報告書で異常を指摘していたのに、主治医がその報告書を確認せず、患者への説明や次の検査につながらなかったというケースです。CTやMRIの画像は、撮影後に放射線科の専門医が読影し、報告書を作成します。ところが、その報告書が主治医に見られないまま埋もれてしまうと、せっかく写っていた異常が放置されてしまいます。
裁判では、検査を指示した医師は、その検査結果や読影報告書を確認する注意義務を負うとされており、これを怠って発見・治療が遅れた場合には、医師の過失が認められています。「他の科が見ているはず」「報告書を見ていなかった」という説明は、確認義務を果たしたことにはなりません。
こうした見落としが起きる背景には、主治医が自分の診療目的とした部位だけを見て、報告書に書かれた別の部位の重大な所見(別の病気の兆候など)に気づかないことや、放射線科医と主治医がそれぞれ別に電子カルテを見るだけで、報告書が確実に共有される仕組みがないことがあります。同じことは、画像だけでなく病理検査や他科で行った検査の結果でも起こり得ます。近年は、報告書の既読・未読を管理する仕組みや、検査を担当した医師と主治医が確実に連携する体制づくりが医療機関に求められており、こうした体制の不備は、病院の組織的な問題として責任の評価にも関わってきます。
「結果が出ていたのに放置された」は、争える。検査の結果に異常が記録されていたのに対応されなかったケースは、記録の上で見落としが明確になりやすく、過失を立証しやすい類型です。ご自身の検査結果や読影報告書に異常の記載がないか、確認する価値があります。
過失と因果関係
検査の見落としは、「すべきことをしなかった」という不作為が問題になります。そのため、適切に検査・対応していれば、より早く発見・治療でき、結果を避けられた(または軽くできた)といえるかという因果関係が争点になります。見落としがなければどうなっていたかを、医学的に検討していくことになります。因果関係の証明の考え方(高度の蓋然性や「相当程度の可能性」)や、がんの見落としの賠償については、誤診・がんの見落としの記事と手術ミスの記事で解説しています。
検査の見落としは、法律上は「すべき医療行為をしなかった」不作為の問題として整理され、病気が進行・悪化してしまう類型にあたります。ここでの過失は、悪い結果が出たかどうかではなく、必要な検査を尽くしたか、臨床所見や画像所見を見落とさなかったか、その後の経過観察が十分だったかという観点から、医療水準を外れた対応がなかったかによって判断されます。因果関係の検討では、どの時点で適切な検査・治療をすべきだったのか(治療をすべき義務が生じた時点)を見きわめ、その時点で対応していれば結果を避けられた・軽くできたといえるかを、診療記録に基づいて具体的に立証していきます。
また、検査の結果が出た後も、医師には臨床経過や検査所見に注意を払い、当初の診断を継続的に見直すべき義務(経過観察義務)があると考えられています。診断は一度で確定するとは限らず、その後の経過や新たな所見で見直されることも少なくないためです。状態の変化に応じた再検査や再評価をせず、漫然と同じ対応を続けた結果、発見・治療が遅れた場合にも、この義務の違反が問題になり得ます。
責任は誰が負うのか
検査の見落としでは、場面に応じて責任を負う人が変わります。検査を指示し結果を確認すべき主治医、画像を読影する放射線科医、検査を実施する臨床検査技師などが問題になり、いずれの場合も雇用する病院が使用者として責任を負います。とくに③の伝達エラーでは、検査結果を確実に主治医へ伝える仕組みが整っていたかという、病院の体制の問題にもなります。
立証と、まずすべきこと
検査の見落としは、記録から明らかになります。まずは記録を確保することが出発点です。
検査結果、画像データ、放射線科の読影報告書、血液・病理の結果、カルテ、紹介状などを、カルテ開示を請求して入手します。とくに読影報告書と、それがいつ主治医に確認されたか(電子カルテの記録)が重要です。手順は証拠収集・カルテ開示の記事にまとめています。改変のおそれがあるときは証拠保全を検討します。
入手した記録を、同じ分野の協力医とともに精査し、どの時点で何を見落としたのか、適切に対応していれば結果を避けられたか(因果関係)を検討します。過失と因果関係の立証の考え方は、誤診・がんの見落としの記事もあわせてご覧ください。
検査の見落とし、とくに「結果が伝わっていなかった」型は、読影報告書に異常が明記されているのに対応されていない、という記録の食い違いから立証できることが多い分野です。ご自身の検査結果や報告書に、指摘されていた異常がなかったか——まずはそこを確認することが第一歩です。当事務所には元裁判官の弁護士が在籍し、記録から過失をどう組み立てるかの見立てもお伝えできます。
よくある質問(FAQ)
検査の見落としがあれば、必ず損害賠償できますか?
いいえ。検査を怠ったこと、または結果を見落としたことに注意義務違反(過失)があり、それによって発見・治療が遅れて被害が生じたこと(因果関係)を立証できて、はじめて損害賠償が認められます。悪い結果が出たことだけでは足りません。
検査の見落としには、どんな種類がありますか?
大きく4つあります。①症状があるのに必要な検査をしなかった、②画像や検体の異常を読み違えた(読影ミス)、③検査はしたが結果が主治医や患者に伝わらず放置された、④転科・転院の際に要注意の所見が引き継がれなかった、です。②③④は「検査はしたのに結果が活かされなかった」点で共通します。
CTを撮っていたのに、結果を教えてもらえませんでした。問題になりますか?
なる場合があります。検査を指示した医師は、その検査結果や放射線科医の読影報告書を確認する注意義務を負うとされています。報告書に異常が記載されていたのに主治医が確認せず、発見・治療が遅れた場合には、医師の過失が認められています。「報告書を見ていなかった」という説明は、確認義務を果たしたことにはなりません。
検査の見落としの責任は、誰が負いますか?
検査を指示し結果を確認すべき主治医、画像を読影する放射線科医、検査を実施する臨床検査技師などが、場面に応じて問題になり、雇用する病院も使用者として責任を負います。結果の伝達エラーでは、検査結果を確実に主治医へ伝える仕組みが整っていたかという、病院の体制の問題にもなります。
「見落としても、どうせ助からなかった」と言われました。あきらめるしかないですか?
あきらめる必要はありません。見落としがなければより早く発見・治療でき、結果を避けられた(または軽くできた)といえるかを、医学的に検討します。仮に救命まで確実とはいえない場合でも、より早い治療を受けられた「相当程度の可能性」が失われたとして賠償が認められることがあります。記録に基づいて検討する価値があります。
見落としを証明するには、何が必要ですか?
検査結果、画像データ、放射線科の読影報告書、血液・病理の結果、カルテ、紹介状が重要です。とくに、読影報告書に異常が記載されていたか、それがいつ主治医に確認されたか(電子カルテの記録)が争点になります。これらをカルテ開示や証拠保全で確保し、協力医とともに検討します。
がんの見落としも、この記事の内容と同じですか?
検査プロセスの見落とし(検査義務違反・読影ミス・結果の伝達エラー・引き継ぎ漏れ)は共通します。そのうえで、がんの見落としに特有の賠償の考え方や、因果関係(相当程度の可能性・延命利益)、具体的な裁判例については、誤診・がんの見落としの記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
検査の見落としを疑ったら、まず何をすべきですか?
カルテ・検査結果・画像データ・読影報告書が失われたり書き換えられたりしないうちに、カルテ開示や証拠保全を検討して確保することが最優先です。時効もあるため、早めに弁護士へご相談ください。
検査の見落としが疑われる方へ
「結果が伝わっていなかった」型は、記録から見落としが明らかになりやすい分野です。まずは検査結果と読影報告書の確保が第一歩です。初回無料で、過失の可能性と見通しをお伝えします。大阪・なんばの弁護士が、お電話・メール・LINEで承ります。
あわせて読みたい関連記事
監修:難波みなみ法律事務所 代表弁護士 南 宜孝(大阪弁護士会・登録番号 49544/中小企業診断士)。大阪市中央区西心斎橋2-4-3 難波御堂筋ビル403。初回相談30分無料。本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。




