コラム
公開日: 2026.08.26

むちうちの慰謝料はいくら?相場と実通院日数3倍の条件

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。大阪弁護士会所属(登録番号49544)、大阪中小企業診断士会所属(登録番号 420113)、幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

むちうちの慰謝料はいくらになるのか。相場と計算方法を大阪の弁護士が解説

むちうちの慰謝料には、他のけがとは別の、低いほうの算定表が使われます。そのうえ「実際に通った日数の3倍で計算される」という説明が広く流通しています。この計算方法は実際に存在しますが、むちうちなら当然にそうなる、というものではありません。

この記事では、むちうちの慰謝料が実際にいくらになるのかを表の数字で示したうえで、どういう場合にどの計算方法が使われるのか、そしてどこが本当の争点なのかを整理します。

結論

むちうちの入通院慰謝料は、通院期間で決まります。裁判所が用いる基準では、通院3か月で53万円、6か月で89万円、12か月で119万円が目安です(他のけがなら、それぞれ73万円・116万円・154万円)。

実通院日数を使う計算は、むちうちなら当然に適用されるものではありません。大阪基準は実通院日数を3.5倍した日数と実際の通院期間を比べて少ないほうを採るとしていますが、その適用条件は「通院が長期にわたり、かつ、不規則な場合」と明記されています。

後遺障害が残った場合は、これとは別に後遺障害慰謝料が発生します。入通院慰謝料とは別個の損害項目です。大阪基準では14級9号が110万円、12級13号が280万円です。

むちうちの慰謝料は、いくらになるのか

3つの基準で金額が変わる

交通事故の慰謝料には、性格の違う3つの基準があります。むちうちの場合も同じです。

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基準誰が使うか水準
自賠責の支払基準自賠責保険が支払額を決めるときの基準。国が定めている最も低い
任意保険の社内基準相手方保険会社が提示額を計算するときの基準。公表されていない自賠責と同程度か、やや上
裁判所が用いる基準裁判所が判決で用いる基準。弁護士が交渉や訴訟で用いる最も高い

自賠責の支払基準では、慰謝料は1日あたり4,300円と決まっています(2020年4月1日より前に起きた事故は4,200円です)。対象になる日数は、治療期間と、実際に通った日数を2倍した数のうち、少ないほうの日数です。

たとえば通院6か月(180日)で実通院60日なら、180日と120日を比べて少ないほう、つまり120日×4,300円=51万6,000円となります。ここが出発点です。

裁判所の基準では、通院期間で決まる

裁判所が用いる基準では、算定表から金額を求めます。むちうちで他覚所見がない場合は、通常より低いほうの表が使われます。東京の赤い本でいう「別表II」です。

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通院期間むちうち(別表II)他のけが(別表I)
1か月19万円28万円9万円
3か月53万円73万円20万円
6か月89万円116万円27万円
12か月119万円154万円35万円

入院した場合は、入院期間と通院期間が交差するところの金額を読みます。表の使い方と自動計算は交通事故の慰謝料計算にまとめています。

大阪では、仕組みが違います。大阪地方裁判所の運用をまとめた冊子(通称「緑本」)は、むちうち用の別表を設けていません。かわりに、軽度の神経症状(むちうちで他覚所見のない場合、軽度の打撲・挫創の場合等)の入通院慰謝料は、通常の慰謝料の3分の2程度とすると定めています。

つまり大阪では、まず通常の表で金額を出し、そこに3分の2を掛ける形になります。

なぜ、むちうちだけ低い表が使われるのか

他覚所見がないから

基準の側は、対象を「むち打ち症で他覚所見がない場合等」と書いています。ここでいう「等」は、軽い打撲・軽い挫創(傷)の場合を意味するとされています。

つまり、低い表が使われる理由は「むちうちだから」ではなく、他覚所見がないからです。同じ頚椎捻挫でも、画像や神経学的検査で異常が確認できる場合は、通常の表で計算されることになります。

むちうちは、そもそも画像に写りにくい

頚椎捻挫は、骨折や脱臼がないまま、首を支えている柔らかい組織——靭帯、椎間板、関節包、筋肉や筋膜——が傷んだものとされています。ところが、たとえば足首の靭帯損傷と違って、その損傷をMRIで確認できないことが多いのです。

むちうちの診断を難しくしている最大の理由が、ここにあります。文献では、症状があってもMRIで異常所見が出るのは一部にとどまり、逆に症状のない人でも年齢が上がれば相当な割合で何らかの異常所見が出るという報告が紹介されています。

つまりMRIに異常が写っても、それだけで事故が原因だとは言えない。写らなくても、症状がないとは言えない。——これがむちうちの難しさです。

なお、診断書には「頚椎捻挫」と書かれることが多いのですが、「外傷性頚部症候群」「頚部挫傷」といった傷病名が付くこともあります。いずれもほぼ同じ病態を指しており、傷病名の違いで慰謝料が変わるわけではありません。

首が回らないこと自体では、後遺障害の等級はつきません。むちうちによる首の動かしにくさは、背骨の運動障害としては評価されない扱いになっています。骨や関節そのものが壊れて動かなくなったのではなく、痛みのために動かしにくいだけと整理されるためです。

むちうちで等級がつくかどうかは、あとで述べる神経症状として評価されるかどうかで決まります。

むちうちなら当然に「実通院日数の3倍」ではない

むちうちの慰謝料を調べると、ほぼ必ずこの説明に出会います。

「むちうちの慰謝料は、実際に通った日数の3倍を通院期間とみなして計算する。だから週1回しか通っていないと、慰謝料は大きく下がる。」

この計算方法自体は、裁判実務に存在します。とくに大阪では、基準そのものにこの計算が明記されています。

大阪の基準(実通院日数と通院期間の計算)

受傷や治療の内容・程度等に照らして通院が長期にわたり、かつ、不規則な場合は、実際の通院期間(始期と終期の間の日数)と実通院日数を3.5倍した日数とを比較して、少ないほうの日数を基礎として通院期間を計算する。

大阪ではさらに、軽度の神経症状として3分の2を掛けます。ですから「実通院日数を3.5倍したうえで3分の2」という計算は、大阪では現に行われています。

問題は、この計算がどういう場合に使われるかです。

条件は「長期にわたり、かつ、不規則」

いま引いた基準の文言をもう一度見てください。冒頭に「通院が長期にわたり、かつ、不規則な場合は」という条件が置かれています。「むちうちの場合は」とは書かれていません。

東京の赤い本も同じ構造です。むちうち用の別表IIについて、「通院が長期にわたる場合は、症状、治療内容、通院頻度をふまえ実通院日数の3倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもある」——条件付きで、文末は「することもある」です。

整理すると、目安として使われる倍率は基準によって違います。大阪の基準は3.5倍、東京の赤い本が別表IIについて挙げるのは3倍程度です。どちらも通院が長期にわたる場合という条件付きで、大阪はさらに不規則であることを明記しています。

2016年に、文言が改められている

この「〜することもある」という書きぶりは、2016年の改定で採用されたものです。改定にあたった検討チームの報告に、理由が説明されています。

基準改定の理由(2016年)

「実通院日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすること『も』ある。」としたのは、通院期間が原則であり、実日数の3.5倍の期間を慰謝料算定の基礎とするのは例外的なものであることを示すためである。

従前の基準は「慰謝料算定のための通院期間は、その期間を限度として、実治療日数の3倍程度を目安とする」という書き方でした。それが「〜することもある」に改められた、という経緯です。

整理すると

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よくある理解実際
むちうちなら当然に実通院日数から計算する当然ではない。原則は通院期間
通院回数が少なければ適用される条件は「長期にわたり、かつ、不規則」であること

つまり、こういうことです。症状や事故の状況に照らして治療期間が相当長期におよび、しかも通院が不規則であるという事案では、実通院日数を基礎とする計算になることがあります。逆に、それに当たらない事案で「むちうちだから実日数の3倍です」と言われたのであれば、その前提は確かめる価値があります。

過度な期待もしないでください

裁判実務では入院期間と通院期間が算定の基本とされており、算定表を大きく離れた金額が認定されることは多くないというのが実務書の見方です。

この記事がお伝えしたいのは「もっと取れる」ではなく、どの計算方法が使われるかには条件があり、それは事案によって決まるということです。

本当に争われるのは、治療期間が相当かどうか

慰謝料が通院期間で決まるのなら、次の問題はその通院期間が認められるかです。実務書も「治療期間の相当性は別の問題」だと明確に切り分けています。

期間そのものが短縮されることがある

相手方保険会社が治療費の支払いを打ち切っても、その後の通院が無意味になるわけではありません。しかし裁判では、相当な治療期間を、実際の治療期間より短く認定することが少なくありません。この場合、慰謝料も短縮された期間に応じた金額になります。

「むちうちは6か月まで」という説明をよく見かけますが、そう決まっているわけではありません。相手方保険会社が治療費の支払い(一括対応)をいつ打ち切るかは、その保険会社の運用、事故の状況、症状の強さによって変わります。実際には1か月で打ち切られることもあれば、6か月を超えて続けてもらえることもあります。

そのうえで、打ち切りの時期と、賠償の対象として認められる治療期間は、別の問題です。打ち切られたからその日で治療期間が確定するわけではありませんし、逆に長く支払ってもらえたからといって、その全期間が当然に認められるわけでもありません。

打ち切りを通告されたときの具体的な対応は保険会社との交渉に、症状固定を誰が決めるのかは症状固定にまとめています。

通院の記録が期間を支える

通院の頻度は、金額の計算方法を左右するだけではありません。あまりに通院間隔が空いていると、その期間について「治療の必要があったのか」を疑われます。期間の相当性そのものを支える材料として効いてくる、ということです。

整骨院に通う場合は注意が必要です。医師の診察が途切れると、症状の経過を医証で辿れなくなります。むちうちで後遺障害を申請するとき、これは決定的に不利に働きます。整骨院の施術が通院として評価されるかどうかは交通事故で整骨院に通っていい?で詳しく説明しています。

後遺障害慰謝料は、入通院慰謝料とは別の損害

ここまでは入通院慰謝料——治療期間中の精神的苦痛に対する慰謝料の話です。これとは別に、治療を終えても症状が残った場合には、後遺障害慰謝料という別個の損害が発生します。

この2つは、まったく別のものです。入通院慰謝料は「治療にかかった期間の苦痛」に対するもの、後遺障害慰謝料は「症状が残ってしまったこと自体」に対するものです。どちらかを選ぶのではなく、要件を満たせば両方が請求できます。

認定されると、いくらになるのか

むちうちで認定されうる等級は、次の2つしかありません。どちらにも当たらなければ非該当です。

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等級内容大阪基準赤い本
第12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの280万円290万円
第14級9号局部に神経症状を残すもの110万円110万円
非該当上のいずれにも当たらない

入通院慰謝料に上乗せされるのではなく、それとは別の費目として計上されます。さらに、後遺障害が認定されれば逸失利益も別途請求できます。

大阪基準には、こう書き添えられています。「ただし、14級に至らない後遺障害がある場合は、それに応じた後遺障害慰謝料を認めることがある」。等級が非該当でも、残った症状に応じた慰謝料が認められる余地がある、ということが基準自体に明記されています。

逸失利益は「後遺障害のせいで将来の収入がどれだけ減るか」を金銭にしたものです。むちうちの14級では、労働能力喪失期間を5年程度とする例が多いのですが、「14級なら5年」と決めつけられるものではありません。実務書も、障害の内容や程度によってはより長く認めることがあると書いており、14級9号で10年を認めた裁判例もあります(横浜地方裁判所平成23年12月21日判決)。

計算方法は交通事故の逸失利益で説明しています。

14級の要件は「常時痛」

では、何があれば14級9号が認定されるのか。もっとも見落とされているのが、痛みの「常時性」です。

「ときどき痛む」では届かない

労災の認定基準は、受傷部位の疼痛について「通常の労務に服することはできるが、受傷部位にほとんど常時疼痛を残すもの」を14級としています。自賠責の実務でも、同じように疼痛の常時性が要求されています。

ここが結果を分けます。後遺障害診断書の自覚症状欄に、常時痛を否定するような書き方——たとえば「天候が悪いときに痛む」「疲れたときに痛む」といった記載——があると、非該当になる可能性が高くなります。

また、痛み以外の感覚の異常(しびれ、感覚が鈍いなど)は、その範囲が広いものに限って14級9号が認定される扱いです。「違和感」という表現では非該当とされやすいとされています。

誤解しないでいただきたいのですが、これは症状を大げさに書きましょうという話ではありません。実際に毎日痛むのに、遠慮して「ときどき痛みます」と伝えてしまう方が多い、という話です。ご自身の症状を、正確に伝えてください。

後遺障害診断書の書き方と、医師への伝え方は交通事故の後遺障害診断書にまとめています。

12級と14級を分けるもの

2つの等級の条文上の違いは「頑固な」が入るかどうかだけで、実務でもこの線引きはしばしば悩ましいとされています。現在の自賠責実務では、次の考え方が採られています。

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等級判断の枠組み実際の運用
第12級13号障害の存在が医学的に証明できるもの画像所見や神経学的検査で異常が確認できる場合にのみ認定される傾向
第14級9号障害の存在が医学的に説明可能なもの証明はできないが、受傷時の状況や治療の経過から説明がつくもの

「証明」と「説明」——この一語の差が、170万円の差になります。

むちうちは前に述べたとおり画像に写りにくいため、多くの事案では12級ではなく14級が問題になります。14級で問われるのは、事故の状況と、症状が続いてきた経過に一貫性があるかどうかです。

だからこそ、事故直後から症状を訴えていたか通院が途切れていないかが効いてきます。数か月たってから「実は首も痛かった」と言い出しても、経過として説明がつきません。等級認定の手続と、非該当だったときの対処は後遺障害認定で説明しています。

検査が陰性でも、諦めなくてよい

むちうちでは、次のような検査が行われます。

  • 関節可動域(首がどこまで動くか)
  • 筋力・筋萎縮(握力、腕の太さの左右差)
  • 反射(深部腱反射、病的反射)
  • 神経根症状誘発テスト(ジャクソンテスト、スパーリングテスト)
  • 画像検査(レントゲン、CT、MRI)
  • 電気生理学的検査

このうち、むちうちで多く実施されるのがジャクソンテストとスパーリングテストです。首を後ろに反らせて圧をかけ、痛みやしびれが出るかを見る検査で、「陽性なら14級」と説明されることがあります。

正確には、こういうことです。これらのテストが陽性であれば、自覚症状の存在を裏付ける材料になります。しかし陰性だからといって、自覚症状が裏付けられないということにはなりません。

実務書も、陰性でも神経根の症状がないとはいえず、事故態様や症状の経過から14級が認定されることは十分にありうるとしたうえで、いずれも14級認定の決め手とはいえないと書いています。

検査が陰性だったことを理由に、そこで諦めてしまう方がいらっしゃいます。決め手にならない検査の結果で、判断を決めてしまう必要はありません。大切なのは、各検査の所見に整合性があるかどうか、症状の推移が記録から辿れるかどうかです。

慰謝料が減らされることもある

増える方向だけでなく、減る方向の事情もお伝えしておきます。裁判例で慰謝料が減額調整されているのは、次のような場合です。

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減額される場合なぜか
既往症や加齢による変化がある症状のすべてが事故によるものとはいえないため
心因的な要因で治療が長期化した長期化の一部が本人側の事情によるため
症状の訴えが過大である訴えの信用性そのものが問われるため
別の事故の治療中に、さらに事故に遭ったどちらの事故による症状かを分けられないため

3つ目に注意してください。むちうちは客観的な所見が乏しいぶん、ご本人の訴えの信用性が判断の中心になります。実際より大げさに伝えることは、増額どころか減額の理由になり得ます。

正確に伝えること——痛むなら痛むと、楽になったなら楽になったと伝えること——が、結果として最も有利に働きます。

慰謝料以外で、総額を動かせるところ

受け取る総額は慰謝料だけで決まりません。むちうちの事案で見落とされやすいものを挙げます。

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費目むちうちで問題になる点
後遺障害の逸失利益等級が認定されれば発生。喪失期間を5年と決めつけない
休業損害会社員なら休業損害証明書。主婦でも請求できる
通院交通費実費。自家用車ならガソリン代として1kmあたりで計算する
過失割合追突でも当然に10対0ではない。示された割合が事故の実態と合うか

追突だからといって、当然に10対0ではありません

むちうちの原因としては、停車中の追突が比較的多くを占めます。信号や一時停止の規制に従って止まっていた車、渋滞で止まっていた車に追突された場合、止まっていた側の基本の過失割合は0とされます。

ただし「追突されたら10対0」と決まっているわけではありません。必要のない急ブレーキをかけていた場合や、ハザードも停止表示器材も出さずに路上に停めていた場合には、追突された側にも過失が認められます。過失割合が1割違えば総額の1割が動きますから、示された割合が事故の実態と合っているかは必ず確認してください。分かれ目は交通事故の過失割合に類型ごとに整理しています。

過失がつかない事故では、ご自身の保険会社は示談を代行できません。保険会社は自社が支払う立場にないと交渉に入れないためです。「保険会社に任せておけばよい」と思っていたら誰も交渉していなかった、ということが起こります。この場合、弁護士費用特約が使えるかを確認してください。

痛くても休めなかった場合

これはあまり知られていません。仕事の性質上ほかの人が代われず、痛みが残っていても働かざるを得なかったという方がいらっしゃいます。

本来なら休業損害の対象になるはずのところ、実際に働いたために休業損害が発生しないことになります。このような場合に、慰謝料を増額する扱いが行われることがあります。「休まなかったから何ももらえない」ではありません。無理をして働いたのなら、それは伝えるべき事実です。

同じ考え方で、自賠責で非該当とされた場合でも、何らかの後遺障害が残っているのであれば慰謝料で調整されることがあります。等級がつかないことと、残った症状が一切評価されないことは別の問題です。基準額を超えて認められる事情については交通事故の慰謝料を増額する方法にまとめました。

よくある質問

Q. むちうちの慰謝料は、通院6か月でいくらになりますか。

A. 裁判所が用いる基準では、他覚所見のないむちうちの場合、通院6か月で89万円が目安です。他のけがであれば116万円ですので、27万円ほど低い水準になります。自賠責の支払基準では1日4,300円で、治療期間と実通院日数を2倍した数のうち少ないほうの日数を掛けて計算します。なお後遺障害が認定された場合の後遺障害慰謝料は、入通院慰謝料とは別個の損害項目で、大阪基準では14級9号が110万円、12級13号が280万円です。

Q. 週1回しか通院していません。慰謝料は実通院日数から計算されますか。

A. そうとは限りません。大阪の基準は、通院が長期にわたり、かつ、不規則な場合には、実際の通院期間と実通院日数を3.5倍した日数とを比べて少ないほうを基礎とすると定めており、そのうえで軽度の神経症状として3分の2を掛けます。東京の赤い本も、別表IIについて実通院日数の3倍程度を目安とすることもあるとしています。ただしいずれも「通院が長期にわたる場合」という条件付きで、むちうちなら当然にこの計算になるわけではありません。ご自身の事案がその条件に当たるかを確かめる価値があります。

Q. なぜむちうちだけ低い算定表が使われるのですか。

A. 基準は対象を「むち打ち症で他覚所見がない場合等」と定めています。低い表が使われる理由はむちうちだからではなく、他覚所見がないからです。同じ頚椎捻挫でも、画像や神経学的検査で異常が確認できる場合は通常の表で計算されます。なお大阪の運用では表を分けず、通常の慰謝料の3分の2程度とする書き方がされています。

Q. 14級9号が認定されるには、何が必要ですか。

A. 労災の認定基準は、受傷部位にほとんど常時疼痛を残すものを14級としており、自賠責の実務でも疼痛の常時性が要求されています。後遺障害診断書の自覚症状欄に常時痛を否定するような記載があると、非該当の可能性が高くなります。あわせて、事故直後から症状を訴えていたか、通院が途切れていないかという経過の一貫性も問われます。

Q. 「天気が悪いと痛む」と書いてもらったら、どうなりますか。

A. 常時痛を否定する記載と受け取られ、非該当につながる可能性があります。痛み以外の感覚の異常についても、範囲が広いものに限って14級9号が認定される扱いで、「違和感」という表現では非該当とされやすいとされています。症状を大げさに伝える必要はありませんが、実際に毎日痛むのであれば、遠慮せずそのとおり医師に伝えてください。

Q. ジャクソンテストが陰性でした。14級は諦めるしかありませんか。

A. 諦める必要はありません。ジャクソンテストとスパーリングテストは、陽性であれば自覚症状の存在を裏付ける材料になりますが、陰性だからといって自覚症状が裏付けられないということにはなりません。実務書も、陰性でも神経根の症状がないとはいえず、事故態様や症状の経過から14級が認定されることは十分にありうると指摘しており、いずれも認定の決め手とはいえないとしています。

Q. MRIで異常なしと言われました。後遺障害は無理でしょうか。

A. むちうちは、そもそも損傷を画像で確認できないことが多い傷病です。症状があってもMRIで異常所見が出るのは一部にとどまり、逆に症状のない人でも年齢が上がれば相当な割合で異常所見が出るという報告が紹介されています。画像で証明できる場合は12級が問題になりますが、証明できなくても医学的に説明可能であれば14級9号の対象になります。

Q. 12級と14級では、どれくらい違いますか。

A. 後遺障害慰謝料は、大阪基準で12級が280万円、14級が110万円ですので、170万円の差があります。さらに逸失利益の労働能力喪失率も異なるため、総額の差はこれより大きくなるのが通常です。両者を分けるのは、障害の存在を医学的に証明できるか、説明可能にとどまるかという点です。

Q. 首が回らなくなりました。後遺障害になりますか。

A. むちうちによる首の動かしにくさは、背骨の運動障害としては後遺障害に認定されない扱いです。骨や関節そのものが壊れて動かなくなったのではなく、痛みのために動かしにくいだけと整理されるためです。むちうちで等級がつくかどうかは、神経症状として12級13号または14級9号に当たるかで判断されます。

Q. 治療費を打ち切られました。慰謝料はそこまでの分しか出ませんか。

A. 打ち切りと、賠償の対象になる治療期間は別の問題です。打ち切り後に自費で通院した期間も、治療の必要性が認められれば慰謝料の対象になります。ただし裁判では、相当な治療期間を実際の治療期間より短く認定することが少なくなく、その場合は慰謝料も短縮された期間に応じた金額になります。主治医の判断を書面にしてもらうことが重要です。

Q. むちうちの治療は6か月で終わりと言われました。本当ですか。

A. そう決まっているわけではありません。相手方保険会社が治療費の支払いをいつ打ち切るかは、その保険会社の運用、事故の状況、症状の強さによって変わります。実際には1か月で打ち切られることもあれば、6か月を超えて続けてもらえることもあります。また、打ち切りの時期と、賠償の対象として認められる治療期間は別の問題です。なお、後遺障害の申請を考えるのであれば、6か月に満たない時点で治療を終えると認定では不利に働きます。

Q. 症状を強めに伝えたほうが、慰謝料は増えますか。

A. 逆効果になり得ます。慰謝料が減額調整された裁判例として、症状の訴えが過大である場合が挙げられています。むちうちは客観的な所見が乏しいぶん、ご本人の訴えの信用性が判断の中心になります。痛むなら痛むと、楽になったなら楽になったと正確に伝えることが、結果として最も有利に働きます。

Q. 痛みを我慢して仕事を続けました。何も請求できませんか。

A. 慰謝料で考慮される場合があります。仕事の性質上ほかの人が代われず、痛みが残っていても働かざるを得なかった場合、本来なら休業損害の対象になるはずのところ実際に働いたために休業損害が発生しないことになります。このような場合に慰謝料を増額する扱いが行われることがあります。無理をして働いた事実は、伝えるべき事実です。

Q. 14級が認定されると、逸失利益は5年分ですか。

A. むちうちの14級では労働能力喪失期間を5年程度とする例が多いのですが、決めつけられるものではありません。実務書も、障害の内容や程度によってはより長く認めることがあるとしており、14級9号で10年を認めた裁判例もあります(横浜地方裁判所平成23年12月21日判決)。症状の内容と、生活や仕事への影響を具体的に主張することになります。

Q. 過失がゼロだと、保険会社が交渉してくれないのですか。

A. そのとおりです。ご自身に過失がない事故では、ご自身の保険会社は示談を代行できません。保険会社は自社が支払う立場にないと交渉に入れないためです。ご自身で交渉するか、弁護士に依頼することになります。弁護士費用特約が付いていれば、自己負担なく依頼できる場合があります。なお、追突であっても当然に過失ゼロになるわけではなく、急ブレーキや不適切な駐停車があった場合には過失が認められることがあります。

提示された金額が妥当かどうか、その場でお答えします

提示額がどの基準で計算されているか、実通院日数を前提に低く見積もられていないか、後遺障害を申請する余地があるか。これは提示書と診断書を拝見すれば、ご相談の場である程度お答えできます。難波みなみ法律事務所では、交通事故の被害者の方の初回相談を30分無料でお受けしています。

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監修:難波みなみ法律事務所 代表弁護士 南 宜孝(大阪弁護士会・登録番号49544/中小企業診断士)。大阪市中央区西心斎橋2-4-3 難波御堂筋ビル403。交通事故の被害者側のご相談を大阪で承っています。

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