- Q. 離婚するときの年金分割とは何ですか。
- A. 婚姻期間中の厚生年金の記録(報酬比例部分)を、夫婦で分け合える制度です。分けられるのは厚生年金の記録だけで、国民年金(基礎年金)やiDeCo・企業年金は対象になりません。制度には「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。
- Q. 相手の年金の半分がもらえるのですか。
- A. いいえ。もらえるのは「相手の年金額の半分」ではありません。分けるのは婚姻期間中の厚生年金記録で、分割の割合(按分割合)には上限が定められており、上限でも2分の1までです。分割された記録は自分の年金に加わり、自分が受給年齢になってから受け取ります。
- Q. いつまでに手続きすればよいですか。
- A. 原則として、離婚した日の翌日から5年以内です(2026年3月31日までに離婚した場合は2年以内)。期限を過ぎると分割を請求できなくなるため、早めの手続きが大切です。
離婚を考えるとき、とくに婚姻期間が長い夫婦で問題になるのが「年金分割」です。「相手の年金を半分もらえる」と誤解されがちですが、実際の制度は少し違います。この記事では、年金分割の対象になるもの・ならないもの、合意分割と3号分割の違い、割合の決まり方、手続きの進め方、そして2026年に延長された請求期限まで、大阪・難波の弁護士がわかりやすく解説します。
年金分割とは|婚姻期間中の「厚生年金の記録」を分ける制度
年金分割とは、離婚したときに、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録(標準報酬)を夫婦で分け合う制度です。会社員や公務員として働き、厚生年金に加入していた期間の記録が対象になります。
よくある誤解が、「相手がもらう年金の半分を受け取れる」というものです。しかし、分割されるのは年金額そのものではなく、婚姻期間中の厚生年金の「記録」です。分けた記録は自分の年金に反映され、自分が年金を受け取れる年齢になってから、増えた分を受け取ることになります。
分割の対象になるのは厚生年金の記録に限られます。次の表で、対象になるもの・ならないものを整理します。
| 区分 | 年金分割の対象 |
|---|---|
| 厚生年金(会社員・公務員)の記録 ※旧共済年金の期間を含む | 対象になる(婚姻期間中の報酬比例部分) |
| 国民年金(基礎年金) | 対象にならない |
| 国民年金基金・iDeCo・企業年金などの「上乗せ」部分 | 対象にならない(分けられるのは厚生年金の報酬比例部分のみ) |
| 婚姻前・離婚後の期間の記録 | 対象にならない(分けるのは婚姻期間中のみ) |
※相手が自営業などで国民年金にしか加入していない場合、分割できる厚生年金の記録がないため、年金分割の効果はありません。
年金分割の2種類|「合意分割」と「3号分割」の違い
年金分割には、合意分割と3号分割の2つの制度があります。どちらが使えるかは、婚姻期間中の働き方によって変わります。
| 合意分割 | 3号分割 | |
|---|---|---|
| 相手の合意 | 必要(合意できなければ裁判所が決める) | 不要(一方の請求だけでできる) |
| 分割の割合 | 話し合いまたは裁判で決める(上限2分の1) | 一律2分の1 |
| 対象期間 | 婚姻期間中の厚生年金記録全体 | 2008年(平成20年)4月1日以後の、相手に扶養されていた期間(第3号被保険者期間) |
| 主に使う人 | 共働きや、扶養期間が短い夫婦など | 専業主婦(主夫)など、相手に扶養されていた人 |
ポイントは、3号分割は相手の合意がいらないという点です。相手に扶養されていた期間(第3号被保険者だった期間)がある人は、相手の同意がなくても、その期間の記録を一律2分の1で分割できます。ただし3号分割の対象は2008年4月1日以後の期間に限られます。また、分割される側が障害厚生年金を受けていて、3号分割の対象期間がその障害厚生年金額の計算の基礎になっている場合には、その期間について3号分割はできません(対象期間の一部だけが基礎になっているときは、その部分を除いた残りが対象になります)。
それより前の期間や、共働きで自分も厚生年金に加入していた期間については、合意分割で分けることになります。合意分割では割合を話し合いで決めますが、まとまらない場合は、家庭裁判所の調停・審判で決めることになります。なお、合意分割を請求すると、3号分割の対象期間が含まれていれば3号分割も同時に行われますので、両方を別々に申し立てる必要はありません。
割合はどう決まる?「2分の1もらえる」とは限らない
分割の割合を按分割合といいます。按分割合には上限が2分の1(0.5)と定められています。つまり、どれだけ多くても、婚姻期間中の夫婦の厚生年金記録の合計が半分ずつになるところまでしか分けられません。
3号分割は一律2分の1ですが、合意分割の割合は話し合いや裁判で決まるため、必ずしも0.5になるとは限りません。実務では0.5で合意するケースが多いものの、事情によってはそれより低い割合になることもあります。下限は、分割を受ける側の記録が分割によって減らない範囲とされています。
弁護士の視点 年金分割は「申請すれば自動で半分」という制度ではありません。とくに合意分割では、まず年金事務所で情報提供を請求して、分割の対象になる記録と割合の範囲を確認することが出発点になります。婚姻期間が長い、相手の収入が高い、専業主婦期間が長いといったケースほど、分割の効果が大きくなります。離婚条件を話し合う段階で、財産分与や慰謝料とあわせて年金分割も忘れずに取り決めておくことが大切です。
年金分割の手続きの進め方
年金分割は、年金事務所(日本年金機構)で手続きします。おおまかな流れは次の3ステップです。
「年金分割のための情報提供請求書」を年金事務所に提出します。これにより、分割の対象になる期間や、按分割合の決められる範囲が記載された情報が交付されます。離婚前でも請求できます。なお、3号分割だけを行う場合は、割合が一律2分の1に決まっているため、この情報提供請求は必須ではなく、ステップ3の標準報酬改定請求だけで手続きできます。
話し合いで割合を決め、合意できたら合意内容を書面にします。合意がまとまらない場合は、家庭裁判所に調停・審判を申し立てて決めてもらいます。3号分割だけなら、この話し合いは不要です。
合意書(または調停調書・審判書など)を添えて、「標準報酬改定請求書」を年金事務所に提出します。これで記録の分割が確定します。
公正証書や、裁判所の調停調書・審判書で割合が決まっている場合は、当事者の一方だけで請求できます。当事者間の合意書(私文書)の場合は、原則として夫婦そろって年金事務所の窓口に行くか、公正証書等にしておく必要があります。
請求期限は「離婚から5年以内」(2026年に延長)
年金分割の請求には期限があります。原則として、離婚した日の翌日から5年以内です。
この期限は、2026年4月1日より前は「2年以内」でした。制度改正により、2026年4月1日以後に離婚した場合は「5年以内」に延長されています。
| 離婚した時期 | 請求期限 |
|---|---|
| 2026年3月31日まで | 離婚の翌日から2年以内 |
| 2026年4月1日以後 | 離婚の翌日から5年以内 |
期限を過ぎると年金分割を請求できなくなります。また、相手が亡くなると手続きが複雑になり、死亡から一定期間を過ぎると請求できなくなるため、離婚が決まったらできるだけ早く手続きを進めることをおすすめします。
年金分割でよくある誤解
よくある質問(FAQ)
Q. 年金分割をすると、相手の年金の半分がもらえるのですか?
A. いいえ。分けるのは年金額そのものではなく、婚姻期間中の厚生年金の記録です。按分割合の上限は2分の1で、分割された記録は自分の年金に反映され、自分が受給年齢に達してから受け取ります。
Q. 専業主婦でも年金分割はできますか?
A. できます。相手に扶養されていた第3号被保険者期間(2008年4月1日以後)については、3号分割により相手の合意がなくても一律2分の1で分割できます。それ以前の期間は合意分割の対象です。
Q. 合意分割と3号分割はどう違いますか?
A. 合意分割は相手の合意(または裁判所の決定)が必要で、割合は上限2分の1の範囲で決めます。3号分割は相手の合意が不要で、2008年4月1日以後の扶養期間を一律2分の1で分割します。合意分割を請求すれば、対象期間があれば3号分割も同時に行われます。
Q. 国民年金やiDeCoは分割できますか?
A. できません。年金分割の対象は厚生年金(旧共済年金を含む)の報酬比例部分に限られます。国民年金(基礎年金)、国民年金基金、iDeCo、企業年金などの上乗せ部分は対象外です。
Q. いつまでに手続きすればよいですか?
A. 原則として離婚した日の翌日から5年以内です。2026年3月31日までに離婚した場合は2年以内です。期限を過ぎると請求できなくなります。
Q. 相手が手続きに協力してくれない場合はどうなりますか?
A. 3号分割は相手の合意が不要なので、一方の請求だけで手続きできます。合意分割で話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停・審判を申し立てて割合を決めてもらえます。
Q. 離婚前に準備できることはありますか?
A. 離婚前でも、年金事務所に「年金分割のための情報提供請求」をして、分割の対象となる期間や割合の範囲を確認できます。条件の話し合いの前に確認しておくと見通しが立てやすくなります。
Q. 年金分割をすると、将来いくら増えますか?
A. 金額は、婚姻期間の長さ、その間の相手の報酬、分割する割合によって大きく変わります。具体的な見込み額は、年金事務所の情報提供(分割後の年金見込額の試算)で確認できます。
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