コラム
更新日: 2026.09.14

誹謗中傷は警察に相談できる?被害届・告訴と民事の違い

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。大阪弁護士会所属(登録番号49544)、大阪中小企業診断士会所属(登録番号 420113)、幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

誹謗中傷, 被害届・告訴と民事の違いを弁護士が解説, 誹謗中傷は警察に相談できるか
ネット誹謗中傷/警察対応

ネットで誹謗中傷を受けたとき、警察に相談すること自体はできます。警察相談専用電話「#9110」や、各都道府県警のサイバー犯罪相談窓口が用意されています。ただし、名誉毀損罪などは成立要件が厳しく、また相手が匿名の場合は加害者を特定できないため、警察がすぐに動いてくれるとは限らないのが実情です。投稿者を特定して賠償を求めたい・投稿を消したいという場合は、民事の手続き(発信者情報開示・損害賠償・削除)のほうが確実です。この記事では、警察に相談する方法、被害届と告訴の違い、警察が動きにくい理由、そして民事での解決との使い分けを、大阪・難波の弁護士が解説します。

まず結論
誹謗中傷を警察に相談できますか?
できます。警察相談専用電話「#9110」や各都道府県警のサイバー犯罪相談窓口で相談を受け付けています。相談自体は無料です。ただし、事件性が認められないと捜査は始まらないことが多く、相手が匿名だと警察でも特定できない場合があります。
警察は必ず動いてくれますか?
必ずではありません。名誉毀損罪・侮辱罪は成立要件が厳しく、また民事不介入の原則から、警察が捜査に踏み込まないことも少なくありません。投稿者の特定や賠償を確実に進めたいなら、民事の発信者情報開示・損害賠償が近道です。
被害届と告訴はどう違いますか?
被害届は「被害を受けた事実を知らせる」もの、告訴は「加害者の処罰を求める正式な申立て」です。名誉毀損罪・侮辱罪は親告罪で、起訴には告訴が必要です。告訴には法律上、捜査機関の受理義務がありますが、実務では受理を渋られることもあり、証拠をそろえて弁護士に依頼して進めるのが一般的です。

1誹謗中傷を警察に相談する方法

ネットの誹謗中傷は、次の窓口で警察に相談できます。緊急の身の危険(殺害予告・つきまとい等)がある場合は、迷わず110番してください。

警察相談専用電話
#9110
緊急性のない相談の総合窓口。担当部署や必要な手続きを案内してもらえます。
サイバー犯罪相談窓口
各都道府県警に設置。ネット上の誹謗中傷・なりすまし・脅迫などの相談を受け付けています。
最寄りの警察署
被害届・告訴状の提出は所轄の警察署で行います。証拠を持参して相談します。
相談前の準備:投稿のURL・スクリーンショット・投稿日時・アカウント名など、証拠を保存してから相談すると話が早く進みます。画面は日付が分かる形で保存しておきましょう。

2被害届と告訴の違い

警察への申告には「被害届」と「告訴」があり、意味が異なります。誹謗中傷で問題となる名誉毀損罪・侮辱罪は親告罪で、起訴してもらうには告訴が必要です。

区分内容ポイント
被害届被害を受けた事実を警察に知らせる書面。処罰を求める意思表示までは含まない。受理されても捜査が始まるとは限らない。
告訴加害者の処罰を求める正式な申立て。名誉毀損罪・侮辱罪は親告罪のため、起訴には告訴が必要。法律上は捜査機関に受理義務があるが、実務では「とりあえず預かる」として受理を渋られることもあり、証拠をそろえて行う。
ポイント:「とりあえず被害届」だけでは処罰までつながらないことが多く、処罰を求めるなら告訴が必要です。告訴は要件・証拠の整理が必要なため、弁護士に依頼して進めるのが一般的です。刑事告訴の詳しい手続きは、関連記事で解説しています(当事務所は刑事事件を取り扱っておりません)。

3警察が動きにくいのはなぜか

「警察に相談したのに動いてくれなかった」という声は少なくありません。これは、次のような事情によるものです。

  • 民事不介入の原則警察は、当事者間の民事的な争い(賠償など)には基本的に介入しません。「まずは民事で」と案内されることがあります。
  • 成立要件と事件性のハードル名誉毀損罪・侮辱罪は成立要件が厳しく、投稿が犯罪に当たると明確に判断できる証拠がないと、捜査に踏み込みにくいのが実情です。
  • 相手が匿名で特定できない匿名投稿では加害者が誰か分からず、警察が捜査に着手しても特定に至らないことがあります。投稿者の特定は、民事の発信者情報開示のほうが確実です。
告訴も「相手の特定」が前提になりがちです。告訴をしても、発信者が特定できていないと受け付けてもらえないことが少なくありません。とくにX(旧Twitter)やGoogleなど海外の事業者が関わる誹謗中傷では、日本の捜査機関の捜査権が国外に及ばないため、警察が動きにくい傾向があります。まず民事の発信者情報開示で投稿者を特定しておくことが、その後の賠償請求や告訴を進める土台になります。
時間の経過に注意。投稿者を特定する通信ログは、経由プロバイダで概ね3〜6か月程度で消えていきます。警察対応を待つあいだにログが消えると、あとから民事で特定しようとしても手遅れになることがあります。並行して早めに弁護士へ相談するのが安全です。

4確実なのは「民事」での解決

投稿者を特定して賠償を求めたい、投稿を削除したいという場合は、刑事(警察)よりも民事の手続きのほうが確実です。民事なら、被害者自身の手続きとして、相手の特定から賠償・削除まで進められます。

区分目的・内容取扱い
刑事(警察・告訴)加害者の処罰を求める。捜査・起訴するかは捜査機関の判断。名誉毀損罪・侮辱罪など。当事務所では取り扱っておりません。
民事(開示・削除・損害賠償)投稿者を特定し、慰謝料などの賠償請求や投稿の削除を求める。被害の回復が目的。当事務所が取り扱う対応です。
告訴が受理されても、逮捕されるとは限りません。誹謗中傷で発信者が逮捕されるケースはむしろ稀で、多くは在宅のまま、自宅の捜索差押えや警察署への呼び出し・取り調べといった形で捜査が進みます。前科・前歴がなければ、起訴猶予(不起訴)となることも少なくありません。加害者の処罰が確実に得られるとは限らないため、賠償や削除で被害を回復したい場合は民事の手続きが確実です。
使い分けの目安:加害者を処罰してほしいなら刑事(告訴)、賠償や削除で被害を回復したいなら民事、が基本です。両方を並行することもできますが、当事務所は民事(発信者情報開示・損害賠償・削除)に限ってご相談を承っています。

5迷ったら、まず証拠を残して弁護士へ

警察に相談するか民事で進めるか迷う場合でも、共通して大切なのは証拠の保全早く動くことです。次の順番を意識してください。

  1. 証拠を保存する投稿のURL・スクリーンショット・投稿日時・アカウント名を、日付が分かる形で保存します。削除される前に確保することが最優先です。
  2. 相談先を選ぶ処罰を求めたいなら警察(#9110・サイバー犯罪相談窓口)、特定・賠償・削除で被害を回復したいなら弁護士(民事)。両方に相談しても構いません。
  3. 早めに着手する投稿者の特定に使うログには期限があります。迷っている間に消えることがあるため、できるだけ早く動きます。
誹謗中傷の投稿者特定・賠償・削除は当事務所へ

難波みなみ法律事務所(大阪・難波/心斎橋)では、誹謗中傷の発信者情報開示・損害賠償請求・削除を一括してサポートします。ログが消える前に、まずはご相談ください。

6よくあるご質問

誹謗中傷を警察に相談したら、動いてくれますか?

相談は受け付けてもらえますが、必ず捜査してくれるとは限りません。名誉毀損罪・侮辱罪は成立要件が厳しく、民事不介入の原則もあるため、「まずは民事で」と案内されることもあります。特定や賠償を確実に進めたいなら民事の手続きが近道です。

相談や被害届に費用はかかりますか?

警察への相談・被害届の提出自体に費用はかかりません。#9110や各都道府県警のサイバー犯罪相談窓口も無料です。一方、民事で投稿者の特定・賠償・削除を進める場合は弁護士費用がかかります。

被害届と告訴、どちらを出すべきですか?

加害者の処罰を求めるなら告訴です。名誉毀損罪・侮辱罪は親告罪で、起訴には告訴が必要です。被害届は被害の申告にとどまり、処罰までつながらないことがあります。告訴は要件・証拠の整理が必要なため、弁護士に依頼して進めるのが一般的です。

相手が匿名でも、警察が特定してくれますか?

匿名投稿では、警察が捜査に着手しても加害者を特定できないことがあります。投稿者(回線契約者)の氏名・住所を特定するには、民事の発信者情報開示請求のほうが確実です。ログの保存期間の制約があるため、早めの着手が重要です。

#9110とは何ですか?

警察相談専用電話の番号です。緊急性のない相談の総合窓口で、担当部署や必要な手続きを案内してもらえます。緊急の身の危険がある場合は110番してください。

警察が動いてくれない場合はどうすればよいですか?

投稿者を特定して賠償を求める・投稿を削除するといった被害回復は、民事の手続きで進められます。発信者情報開示で相手を特定し、損害賠償請求や削除請求を行います。証拠を保全のうえ、早めに弁護士へご相談ください。

警察と弁護士、両方に相談してもよいですか?

構いません。処罰を求める刑事と、賠償・削除を求める民事は目的が異なり、並行して進めることもできます。ただし当事務所は民事(開示・損害賠償・削除)を取り扱い、刑事事件は取り扱っておりません。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案への法的判断を示すものではありません。警察の対応・立件の可否は事案により異なります。当事務所は民事(発信者情報開示・削除・損害賠償)を取り扱い、刑事事件(刑事告訴・刑事弁護)は取り扱っておりません。具体的な対応は難波みなみ法律事務所(代表弁護士 南宜孝/大阪弁護士会)までご相談ください。掲載内容は2026年時点の情報に基づきます。

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