コラム
公開日: 2026.10.22

交通事故の醜状障害|顔の傷あとの慰謝料と後遺障害等級

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。大阪弁護士会所属(登録番号49544)、大阪中小企業診断士会所属(登録番号 420113)、幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回、15回、75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコム、ココナラ、弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

交通事故 醜状障害(顔の傷あと)の慰謝料と後遺障害等級
結論から

Q. 顔や体に傷あとが残ったら、後遺障害として認めてもらえますか。

残った傷あとの位置と大きさが基準を満たせば、「醜状障害」として後遺障害に認定されます。顔・頭・首の傷は等級が高く、手足の露出する部分も対象です。傷の長さや面積で等級がほぼ決まるため、治ったあとの状態を写真と医師の記載で正確に残すことが重要です。

Q. 慰謝料はどのくらいですか。

弁護士(裁判所)基準の後遺障害慰謝料は、大阪基準で12級の醜状なら280万円、顔に5cm以上の線状痕が残る9級なら670万円が目安です。これとは別に、入通院の慰謝料や逸失利益を請求できる場合があります。自賠責基準で示談をすると、弁護士基準に満たない金額になります。

Q. 「傷は仕事に影響しないから逸失利益はゼロ」と言われました。

鵜呑みにしないでください。保険会社は醜状障害で逸失利益を否定しがちですが、接客・営業・対人の仕事への支障、配置転換や昇進への影響などを具体的に主張して認められた例があります。慰謝料の増額で考慮されることもあります。

交通事故で顔や体に傷あとが残ると、痛みが引いたあとも「人の目が気になる」「写真を撮られたくない」といった苦しみが続きます。これは「醜状障害(しゅうじょうしょうがい)」という後遺障害として、賠償の対象になります。この記事では、どんな傷が何級になるのか、慰謝料はどのくらいか、保険会社が持ち出す「逸失利益は認められない」にどう反論するかを、大阪の被害者側の弁護士が整理します。

顔の傷の等級は、男女で同じになった

醜状障害は、かつて同じ傷でも男性と女性で認定される等級が大きく違いました。女性の方が高く、男性は低く扱われていたのです。

この格差について、顔や首に大きなやけどを負った男性の事案で、裁判所が「合理的な理由のない性別による差別であり、憲法14条1項に違反する」と判断しました(京都地判平成22年5月27日)。これを受けて労災と自賠責の後遺障害等級の基準が改正され、平成22年(2010年)6月10日以後に起きた事故については、性別を問わず同じ基準で認定されます。

つまり、男性でも女性でも、傷の位置と大きさが基準を満たせば同じ等級になります。古い情報には男女差が残っていることがあるので、事故の日付とあわせて確認してください。

醜状障害とは|対象になる部位と「人目につく程度」の前提

醜状障害とは、治療を尽くしても消えずに残った傷あと(瘢痕)・線状痕・組織の陥没・やけどのあと・色素沈着などのうち、一定の大きさ以上のものをいいます。等級が認められる部位は、大きく2つに分かれます。

ひとつは「外貌(がいぼう)」です。外貌とは、頭部・顔面部・首のように、日常的に外から見える、上肢・下肢以外の部分を指します。もうひとつは上肢(腕)・下肢(脚)の露出する面です。外貌の傷のほうが、等級は高く評価されます。

重要な前提として、醜状障害は「人目につく程度以上」であることが必要です。髪の毛で隠れて見えない部分や、下着で隠れる部分は、原則として対象になりません。逆に言えば、ふだん露出する部分に残った傷が対象になります。

醜状障害は、痛みやしびれといった「機能の障害」とは別に、見た目そのものを評価する後遺障害です。だからこそ、症状固定(これ以上良くならないと判断される時点)になったときの傷の状態を、正確に記録しておくことが決め手になります。

等級と認定基準|傷の「大きさ」でほぼ決まる

醜状障害の等級は、傷の大きさや長さという客観的な数値で決まる部分が大きいのが特徴です。主な等級と目安は次のとおりです。

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等級内容認定の目安(外貌)
7級12号外貌に著しい醜状を残すもの顔面部に鶏卵大面以上の瘢痕、または10円硬貨大以上の組織陥没。頭部に手のひら大以上の瘢痕など
9級16号外貌に相当程度の醜状を残すもの顔面部に長さ5cm以上の線状痕
12級14号外貌に醜状を残すもの顔面部に10円硬貨大以上の瘢痕、または長さ3cm以上の線状痕。頭部に鶏卵大面以上の瘢痕など
14級上肢・下肢の露出面に醜状を残すもの腕または脚の露出する面に、手のひら大の傷あとなど

「手のひら大」は、傷を負った本人の手のひらの面積(指を除く)で測ります。複数の傷あとは、互いに隣接しているか、全体として一つの傷と同じくらいの醜状といえる場合に限り、面積や長さを合算して評価します(単に傷が複数あるだけでは合算されません)。また、顔と腕など離れた別々の部位の傷は、一つにまとめるのではなく、それぞれ等級をつけたうえで併合し、等級が繰り上がることがあります。線状痕(線状の傷)か、面として広がる瘢痕かで当てはまる基準が変わる点にも注意が必要です。

傷あとだけでなく、やけどが治ったあとに残る黒褐色の変色や、色素が抜けてできる白斑も醜状の対象です。これらは、永久的に残ると認められ、人目につく程度であれば、顔などの「醜状」(12級14号)として扱われます。

後遺障害慰謝料の目安

後遺障害が認定されると、入通院の慰謝料とは別に、後遺障害慰謝料を請求できます。等級ごとの金額は、どの基準で計算するかで大きく変わります。

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等級大阪(緑本)東京(赤い本)自賠責
7級12号1030万円1000万円419万円
9級16号670万円690万円249万円
12級14号280万円290万円94万円
14級110万円110万円32万円

当事務所は大阪を拠点とするため、原則として大阪地裁の運用に沿った基準(通称・緑本)で計算します。ごらんのとおり、自賠責基準と弁護士基準では2倍以上の開きが出る等級もあります。保険会社が自賠責に近い金額を提示してきても、それが上限ではありません。具体的な金額は交通事故の慰謝料計算のページでも確認できます。

認定までの手続き|「症状固定」のあとに等級を申請する

醜状障害は、傷あとが「これ以上は大きく変わらない」という状態(症状固定)になってから、後遺障害の等級認定を申請します。手順は次の3ステップです。

  1. 症状固定まで治療する。縫合や形成外科の処置を尽くし、傷あとが落ち着くまで通院します。あせって早く固定すると、本来受けられる処置を受けられないことがあります。
  2. 後遺障害診断書を書いてもらう。医師に、傷あとの正確な位置・長さ・面積・形状を記載してもらいます。「顔面部 ○cm の線状痕」のように、大きさが数値で書かれていることが大切です。
  3. 等級を申請する。自賠責に対し、被害者自身で請求する方法(被害者請求)と、相手の保険会社に任せる方法(事前認定)があります。醜状は実際に傷を見て判断する「面接(面接確認)」が行われることが多く、傷が最もはっきり見える条件で臨めるよう準備します。

弁護士からひとこと

醜状障害は、診断書の書き方と写真で結論が左右されます。傷の大きさが数値で書かれていないと、基準を満たしているのに等級が下がったり、非該当になったりします。申請の前に、診断書と傷の状態を弁護士が確認し、必要なら医師に追記をお願いすることをおすすめします。当事務所には元裁判官の弁護士が在籍し、立証の見立てもお伝えできます。

逸失利益は認められないのか

醜状障害でいちばん争いになるのが、逸失利益(後遺障害で将来の収入が減る分の賠償)です。保険会社は、「顔の傷は手足のように体を動かす能力を失わせるものではないから、労働能力に影響しない。だから逸失利益はゼロだ」と主張してくることがよくあります。

しかし、これを鵜呑みにする必要はありません。裁判では、次のような事情を具体的に示して、逸失利益が認められたり、認められない代わりに後遺障害慰謝料が増額されたりしています。

  • 接客業・営業職・対人の仕事など、人前に出ることが収入に直結する職業であること
  • 傷あとを理由に配置転換を命じられた、昇進・採用で不利に扱われたなどの具体的な不利益
  • 対人関係で心理的な負担を抱え、仕事の継続や転職に支障が出ていること

等級に対応する労働能力の喪失割合は、7級で56%、9級で35%、12級で14%とされています。ただし醜状障害では、この割合がそのまま認められるとは限らず、傷の程度と職業との関係から個別に判断されます。モデルや接客業では影響が認められやすく、事務職などでは小さく評価される傾向があります。実際に、将来の就職・転職への影響を考慮して一定の労働能力の低下を認めた裁判例がある一方、小さな線状痕では収入が減る可能性はないとして逸失利益を否定した裁判例もあります。

労働能力への直接の影響までは認められない場合でも、傷あとを気にして対人関係や対外的な活動に消極的になるといった影響があるときは、逸失利益に代えて後遺障害慰謝料を増額して調整することがあります(目安として100万円から200万円程度の加算が示されています)。直接・間接のいずれの影響も認められないときは、逸失利益も増額も否定される整理です。

ポイントは、「傷があるから当然に減収する」ではなく、「この傷が、この人の仕事にどう影響するか」を個別に立証することです。抽象的に主張しても通りません。逆に、職業・勤務先の対応・本人の状況を資料でそろえれば、保険会社の「ゼロ回答」をくつがえせる余地があります。逸失利益の計算の考え方は交通事故の逸失利益で解説しています。

醜状障害として認められにくい傷

次のような場合は、等級が認められにくい、または対象外になります。

  • 髪の毛や衣服で隠れて、人目につかない部分の傷。原則として醜状障害の対象になりません。線状痕では、眉毛や髪に隠れる部分を除いた「見える部分の長さ」で判断されます。たとえば3.5cmの傷でも1.5cmが眉毛に隠れていれば、残り2cmとして扱われ、顔面部の「3cm以上」という目安に届かないことがあります。
  • 基準の大きさに届かない小さな傷。たとえば顔面部で見える部分が長さ3cmに満たない線状痕は、12級に至らないことがあります。ただし、傷が隣接していたり全体として一つの傷と同程度の醜状といえる場合は、合算して評価されることがあります。
  • 時間の経過で目立たなくなることが見込まれる傷。症状固定の時点での状態で判断されるため、記録のタイミングが重要です。

ただし、傷の大きさが基準にわずかに届かない場合でも、傷の部位や形状に加えて、本人の年齢・職業などの事情を総合して等級を判断した裁判例があります(大阪地判平成13年4月24日)。数値だけで機械的に決まるわけではないので、自己判断であきらめないことが大切です。

等級が非該当だったり、思ったより低かったりした場合でも、あきらめる必要はありません。診断書の記載や写真を補い、異議申立てで等級が変わることがあります。進め方は後遺障害の異議申立てをご覧ください。

よくある誤解・デメリット

醜状障害をめぐって、被害者がつまずきやすい点を整理します。

「傷が小さいから請求しても無駄」ではありません。顔面部なら10円硬貨大の瘢痕や3cmの線状痕で等級がつく可能性があります。自己判断で請求をあきらめる前に、大きさを測って確認してください。

「醜状だけでは慰謝料しか取れない」も不正確です。職業や影響しだいで逸失利益が認められる余地があり、入通院慰謝料も別に請求できます。

一方で注意点として、症状や治療の経過を十分に確認しないまま、症状固定の時期や残っている症状の内容を決めてしまわないことが大切です。固定の時期は、本人・医師・保険会社でよく話し合って判断します。「早く固定すれば必ず損」「治療を続ければ必ず上の等級になる」と言い切れるものではなく、固定した時点の状態をもとに等級が評価されます。

よくある質問

醜状障害の等級は、男女で違いますか。

現在は違いません。かつては女性の方が高い等級に扱われていましたが、性別による差を違憲とした裁判例(京都地判平成22年5月27日)を受けて基準が改正され、平成22年(2010年)6月10日以後に起きた事故は男女同一の基準で認定されます。

顔に5cmの傷が残りました。何級になりますか。

顔面部に長さ5cm以上の線状痕が残った場合は、9級16号「外貌に相当程度の醜状を残すもの」に当たる可能性があります。3cm以上5cm未満なら12級14号が目安です。実際の認定は傷の形状や面接確認で判断されます。

傷あとの慰謝料は、どのくらいですか。

弁護士(裁判所)基準の後遺障害慰謝料は、大阪基準で12級の醜状が280万円、9級が670万円、7級が1030万円が目安です。自賠責基準はこれより大幅に低く、12級で94万円です。入通院慰謝料や逸失利益は別に請求できます。

保険会社に「傷は仕事に関係ないから逸失利益は出ない」と言われました。

鵜呑みにしないでください。接客・営業など対人の仕事への支障や、配置転換・昇進への影響を具体的に立証して逸失利益が認められた例があります。認められない場合でも、後遺障害慰謝料の増額で考慮されることがあります。

髪で隠れる部分の傷は対象になりませんか。

原則として対象になりません。醜状障害は「人目につく程度以上」であることが前提のため、髪の毛や衣服で日常的に隠れる部分の傷は評価されにくいです。ただし、分け目など露出する状況があれば争う余地があります。

いつ等級を申請すればよいですか。

傷あとがこれ以上大きく変わらない状態(症状固定)になってから申請します。急いで固定すると必要な処置を受けられないことがあるため、形成外科などで傷が落ち着くまで治療を続けることが大切です。

後遺障害診断書には何を書いてもらえばよいですか。

傷あとの位置・長さ・面積・形状を、数値で正確に書いてもらうことが重要です。「顔面部 ○cm の線状痕」のように大きさが明記されていないと、基準を満たしていても等級が下がることがあります。

非該当や低い等級になったら、もう覆せませんか。

覆せることがあります。診断書の記載や傷あとの写真を補強し、異議申立てを行うことで等級が見直される場合があります。弁護士が立証の不足を点検し、必要な資料をそろえて申請し直します。

顔や体の傷あとでお悩みの方へ

醜状障害は、診断書の書き方・写真・逸失利益の立証で結果が大きく変わります。難波みなみ法律事務所は大阪・なんばの事務所で、交通事故の被害者側を数多く扱ってきました。元裁判官の弁護士が在籍し、損害算定や立証の見立てもお伝えできます。初回相談30分無料、着手金無料で対応します。弁護士費用特約があれば、費用は保険でまかなえることが多いです。

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監修:難波みなみ法律事務所/代表弁護士 南 宜孝(大阪弁護士会・登録番号49544)。大阪市中央区西心斎橋2-4-3 難波御堂筋ビル403。初回相談30分無料(電話 06-6786-8103/受付9:00〜22:00)。

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