コラム
更新日: 2026.09.08

なりすましの開示請求・削除|投稿者特定を弁護士が解説

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。大阪弁護士会所属(登録番号49544)、大阪中小企業診断士会所属(登録番号 420113)、幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

暗い背景でスマートフォンを操作する手元|なりすまし被害のイメージ
まず結論
なりすましの投稿者は特定できますか?
特定できます。なりすまし投稿やなりすましアカウントについて、運営会社(SNS等)に発信者情報開示を求め、開示されたIPアドレスから経由プロバイダをたどる二段階で、投稿者にたどり着けます。ログインして使うSNSでは、ログイン時のIPアドレス(特定発信者情報)が開示の対象になります。
なりすましアカウントや投稿は削除できますか?
削除できます。まず各SNSのなりすまし報告フォームへ通報し、応じないときは送信防止措置依頼、それでも消えないときは人格権に基づく削除仮処分で削除を実現できます。
どんな場合に「違法」になりますか?
なりすまし投稿が名誉毀損・侮辱・プライバシー侵害にあたる場合や、本人になりすまされたことで精神的苦痛を受けた場合(アイデンティティ権・氏名権・肖像権の侵害)に違法となります。逆に、単に名前をまねただけで実害がない場合は違法と認められないこともあります。

SNSやネット掲示板で、あなたになりすましたアカウントが作られたり、あなたの名前・写真で勝手に投稿されたりする「なりすまし」被害が起きています。「なりすましアカウントを消したい」「なりすましている相手を特定して責任を追及したい」という2つの目的では、進め方が変わります。この記事では、大阪市なんば・心斎橋の難波みなみ法律事務所が、なりすましの削除・投稿者特定(発信者情報開示)・費用・時効を、実務にそって解説します。

1なりすましで問題になる「権利侵害」

なりすましとは、第三者が本人になりすます行為で、SNSで他人の氏名・写真を使ってアカウントを作る、本人を装って投稿する、といった形で起こります。削除や投稿者特定を進めるには、まずどの権利がどう侵害されているかを整理する必要があります。

問題になりうる権利内容
名誉毀損・侮辱なりすまし投稿の内容が、本人の社会的評価を下げる事実の摘示や侮辱にあたる場合。本人が発言したかのように受け取られる点で悪質です。
プライバシー侵害なりすましを通じて、本人の私生活や個人情報が勝手に公開される場合。
肖像権・氏名権本人の顔写真や氏名を、承諾なく勝手にアカウントや投稿に使う場合。氏名を冒用されない利益は人格権として保護されます。
アイデンティティ権「他人との関係で人格の同一性を保ち続ける利益」。なりすまし発言が本人のものと受け止められ、強い精神的苦痛を受けた場合に問題になります(大阪地判平成28年2月8日が、名誉やプライバシーとは別の利益として認めました)。
「同定可能性」が削除・開示のカギ削除や開示が認められるには、そのなりすましアカウント・投稿が「本人のことだ」と一般の閲覧者に分かること(同定可能性)が必要です。本名・顔写真・所属など本人と結びつく情報があるほど認められやすく、本人と結びつかない場合は権利侵害が否定されることがあります。
「まねただけ」では違法にならないこともなりすましは、単に他人の名前や写真をまねただけで、ただちに違法になるわけではありません。裁判では、投稿の内容が名誉毀損・プライバシー侵害にあたるか、なりすましによって本人に実害(精神的苦痛など)が生じているか、といった点で違法性が判断されます。パロディやファンアカウントであることが明示され、実害がない場合には、削除・開示が認められにくいことがあります。

2なりすましを削除する方法

方法1:SNSのなりすまし報告フォームへ通報(任意の削除)

まずは、なりすましアカウント・投稿があるSNSのなりすまし(偽アカウント)報告フォームから通報します。多くのSNSは、本人へのなりすましをポリシー違反として削除・アカウント停止の対象にしています。費用をかけずに試せますが、削除するかどうかは運営の判断で、確実ではありません。本人確認書類の提出を求められることもあります。

方法2:送信防止措置依頼(プロバイダ責任制限法)

運営が対応しないときは、送信防止措置依頼を検討します。情報流通プラットフォーム対処法(旧・プロバイダ責任制限法)にもとづき、名誉毀損・プライバシー侵害・肖像権侵害などの権利侵害を示して、正式に削除を申し入れる手続です。

方法3:削除仮処分(裁判手続)

任意の削除に応じないときは、運営会社を相手に、名誉権・肖像権・アイデンティティ権といった人格権に基づく削除の仮処分を裁判所に申し立てます。国内の掲示板は手続を進めやすい一方、海外SNS(Meta・Google・X等)は運営が海外法人のため、相手方の確認や送達に工夫が必要です。

開示も考えるなら証拠を保全投稿者の特定も視野に入れるときは、削除の前に、なりすましアカウントのURL・ユーザー名・投稿内容・日時・プロフィール画面をスクリーンショットで保存しておきます。削除されると、後の開示請求で必要な証拠が失われるおそれがあります。

3なりすまし投稿者を特定する方法(発信者情報開示)

なりすましの相手に損害賠償や謝罪を求めるには、まず投稿者を特定します。多くのSNS事業者は任意の開示に応じないため、発信者情報開示命令(令和3年改正で新設された非訟手続)や仮処分で進めます。

ここで重要なのは、運営会社から開示されるのはIPアドレス等までで、投稿者本人の氏名・住所は分からないという点です。開示されたIPから通信を提供した経由プロバイダ(携帯会社・回線事業者)を特定し、そのプロバイダにもう一度開示を求める――という二段階(少なくとも2回の手続)で、はじめて投稿者にたどり着きます。

SNSのなりすましは「ログイン時IP」が鍵ログインして使うSNS(ログイン型)では、投稿ごとの通信記録が残らないことが多く、アカウントにログインしたときのIPアドレス(特定発信者情報)が開示の中心になります。あわせて、登録されたメールアドレス・電話番号の開示を求めることもあります。
証拠の保全なりすましアカウントのURL・ユーザー名・投稿・日時・プロフィールを、日時がわかる形で保存します。
運営会社へIP等の開示を求めるSNS等の運営会社に対し、投稿時またはログイン時のIPアドレス等の開示を、発信者情報開示命令や仮処分で求めます。あわせてログの消去禁止も申し立てられます。
経由プロバイダを特定する開示されたIPアドレスをもとに、その通信を提供した経由プロバイダ(携帯会社・回線事業者)を特定します。
経由プロバイダへ第二段階の開示請求経由プロバイダに対し、契約者の氏名・住所の開示を求めます。ログの保存期間があるため、時間との勝負になります。
速さが必要なら仮処分が優位発信者情報開示命令は、相手が任意に従わないときの間接強制が、告知から1か月の異議申立期間を経て確定するまでできません。経由プロバイダの通信記録(ログ)の保存期間は限られるため、時間との勝負になる第一段階では、発令後すぐに執行できる仮処分の方が優位なことがあります。

4刑事責任・その他の請求

なりすまし投稿の内容によっては、名誉毀損罪・侮辱罪で刑事告訴を検討できます。また、他人のIDやパスワードを使って本人のアカウントに不正にログインしてなりすました場合は、不正アクセス禁止法違反にあたることもあります。特定できた相手には、慰謝料などの損害賠償を請求できます。どの手段が有効かは、なりすましの態様と証拠によって変わります。

5費用・期間の目安

手続期間の目安内容
SNSへの報告・削除依頼数日〜数週間費用をかけず試せる。削除は運営の判断で不確実。
削除仮処分概ね1〜2か月運営会社を相手に人格権に基づき削除。
投稿者の特定(開示)数か月〜半年程度運営会社でIP等を取得→経由プロバイダで契約者を特定(二段階)。

弁護士費用は、着手金・報酬制で、削除のみか、特定・損害賠償まで行うかによって幅があります。具体的な金額は、被害の内容をうかがったうえでご説明します。難波みなみ法律事務所は初回相談無料です。

6時効と、急いだほうがよい理由

投稿者特定の鍵になる通信記録(アクセスログ)は、事業者ごとに保存期間が限られ、経過すると特定が難しくなります。これが「急ぐべき」最大の理由です。

また、慰謝料などの損害賠償を請求できる権利(不法行為に基づく損害賠償請求権)は、損害および加害者を知った時から3年で時効にかかります。なりすましのような匿名の被害では、この「加害者を知った時」は投稿者を特定できた時にあたるため、3年の時効は投稿者が特定できてから進行を始めるのが原則です。もっとも、その前提となるログには保存期間の限りがあるため、早期の着手が重要です。

まとめなりすましは、削除(SNS報告→送信防止措置依頼→削除仮処分)と投稿者特定(運営会社でIP等→経由プロバイダ)で対応できます。違法性は、投稿の内容や、本人に生じた実害(名誉・プライバシー・アイデンティティ権の侵害)で判断されます。ログと時効の期限があるため、早めのご相談が有効です。

7よくある質問

なりすまされただけで訴えられますか?
なりすまし単体では、ただちに違法とは限りません。投稿の内容が名誉毀損・侮辱・プライバシー侵害にあたるか、なりすましによって本人に精神的苦痛などの実害が生じているか(アイデンティティ権・氏名権・肖像権の侵害)で、削除や損害賠償の可否が判断されます。
アイデンティティ権とは何ですか?
「他人との関係で人格の同一性を保ち続ける利益」のことです。なりすまし発言が本人のものと受け止められ、強い精神的苦痛を受けた場合に、名誉やプライバシーとは別の権利侵害として問題になります(大阪地判平成28年2月8日)。
運営会社に開示請求すれば投稿者の名前が分かりますか?
分かりません。運営会社から開示されるのはIPアドレス等までです。投稿者本人の氏名・住所を特定するには、そのIPの通信を提供した経由プロバイダに対して、もう一度(第二段階の)発信者情報開示を行う必要があります。
SNSのなりすましは投稿時のIPが残らないと聞きました。
ログインして使うSNSでは、投稿ごとのIPが残らないことが多いため、アカウントにログインしたときのIPアドレス(特定発信者情報)を開示の中心にします。登録メールアドレス・電話番号の開示を求めることもあります。
なりすましアカウントの削除だけでも依頼できますか?
できます。まずSNSのなりすまし報告フォームへの通報、応じない場合は送信防止措置依頼や削除仮処分で対応します。ただし後で投稿者を特定したい場合は、削除前に証拠を保全しておくことが重要です。
なりすましに刑事責任はありますか?
投稿内容が名誉毀損・侮辱にあたれば刑事告訴を検討できます。他人のIDでアカウントに不正ログインしてなりすました場合は、不正アクセス禁止法違反にあたることもあります。
どのくらい急ぐ必要がありますか?
早いほど有利です。特定に使う通信記録(ログ)は保存期間が限られ、経過すると特定が困難になります。慰謝料請求の時効も、損害と加害者を知った時から3年です。見つけたら早期にご相談ください。
弁護士に依頼せず自分でできますか?
SNSへの報告・削除依頼はご自身でも可能です。もっとも、削除仮処分や発信者情報開示といった裁判手続、二段階の期限管理、なりすましの違法性の主張は専門的で、途中でログが消えると取り返しがつきません。確実性を求めるなら弁護士への依頼をおすすめします。

なりすまし被害は、大阪の難波みなみ法律事務所へ

削除・投稿者特定・損害賠償・刑事告訴まで、最適な進め方をご説明します。ログが消える前に、まずは無料相談を。

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監修:難波みなみ法律事務所(大阪市中央区なんば・心斎橋/代表弁護士 南 宜孝)。本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。掲載の法令・裁判例は執筆時点のものです。具体的な対応は、弁護士にご相談ください。

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