コラム
公開日: 2026.09.21

誹謗中傷の証拠の残し方|削除・開示の前にやるべきことを弁護士が解説

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。大阪弁護士会所属(登録番号49544)、大阪中小企業診断士会所属(登録番号 420113)、幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回15回75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコムココナラ弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

誹謗中傷, 削除・開示の前にやるべきこと, 証拠の残し方と 確保のポイント
誹謗中傷

ネットで誹謗中傷を受けたとき、削除も、投稿者の特定(発信者情報開示)も、慰謝料請求も、刑事告訴も、すべての出発点は「証拠を残すこと」です。投稿は相手にいつ消されるか分かりませんし、投稿者をたどるための通信記録にも保存期限があります。つまり証拠の確保は、早ければ早いほど有利です。この記事では、何を・どう残せばよいか、やってはいけない撮り方、証拠力を高める方法までを弁護士がわかりやすく解説します。

結論から

誹謗中傷を見つけたら、まず何をすればいいですか?

消される前に、投稿のスクリーンショットと「URL・投稿日時・アカウント名」を保存してください。加工はせず、できれば早めに弁護士へ相談します。投稿はいつ削除・編集されるか分からず、投稿者をたどる通信記録にも保存期限があるため、初動の速さがそのまま結果を左右します。

スクリーンショットさえ撮れば十分ですか?

不十分なことがあります。画面の一部だけでなく、投稿URL・投稿日時・アカウント名(ID)・投稿本文の全体・前後のやりとりまで分かる形で残してください。文脈が切れていると、違法性の判断や投稿者の同定に支障が出ることがあります。

とりあえず通報して消してもらってもいいですか?

先に消すのは危険です。投稿が削除されると、その内容も、投稿者をたどる手がかりも失われかねません。証拠を確保してから、削除や開示の手続きに進むのが原則です。

1なぜ「証拠の確保」が最初にして最重要なのか

誹謗中傷への対応は、大きく分けて①削除 ②投稿者の特定(発信者情報開示) ③損害賠償(慰謝料)④刑事告訴の4つですが、そのどれもが「その投稿が確かに存在し、あなたの権利を侵害している」ことを示す証拠を前提にしています。とくに投稿者を特定する開示請求では、情報流通プラットフォーム対処法(旧・プロバイダ責任制限法)5条が、権利侵害が明らかであること(明白性)を要件としています。この明白性を基礎づけるのが、確保した投稿そのものです。どこからが違法な投稿になるかは誹謗中傷はどこから?違法になる基準で解説しています。

証拠の確保を急ぐべき理由は2つあります。1つは、投稿はいつでも削除・編集されうること。相手が消してしまえば、内容の立証が一気に難しくなります。もう1つは、投稿者をたどるための通信記録(アクセスログ)に保存期限があることです。時間が経つと、たとえ手続きを始めても投稿者にたどり着けなくなるおそれがあります。

まず押さえること:①消される前に保存する ②加工・トリミングをしない(改変を疑われない形で) ③URL・日時・アカウントまで残す ④迷ったら早めに弁護士へ。この4点が初動のすべてです。

2何を保存すればよいか(保存対象の一覧)

「投稿の文字」だけを撮っても、後で足りなくなることがあります。次のものをセットで残してください。

保存するもの残し方なぜ必要か
投稿の本文スクリーンショット(全文が切れないように。長い場合は分割+全体が分かる形で)権利侵害の内容そのもの。違法性の判断の中心
投稿URLアドレスバーごと撮影+URLをテキストでも控えるどのページの投稿かを特定。削除・開示請求で必須
投稿日時投稿に表示された日時を画面ごと保存時効・手続の起点や、投稿の同一性の確認に必要
アカウント名・IDプロフィール画面・ユーザーページも保存誰の投稿かをたどる手がかり(同定・特定)
サイト名・閲覧方法掲示板・SNSの名称と、その投稿にたどり着く手順も控える投稿の所在を特定し、あとから同じ画面を再現するため
投稿番号・位置掲示板ならレス番号やスレッド上の位置も保存多数の投稿の中から対象を正確に特定するため
前後のやりとり・スレッド返信や引用も含めて文脈が分かるように保存一言だけでは違法性が判断しづらいため文脈が重要
拡散の状況いいね・リポスト・閲覧数などが分かる画面も保存被害の広がり(損害)の裏づけになる
管理者とのやり取り削除・開示の要請とその回答、対応の経緯も保存対応の経過や被害の継続を示す資料になる

「同定可能性」も残す:投稿があなたのことだと第三者に分かる状態かどうかは、違法性の判断で重要になります。実名が出ていなくても、ハンドルネーム・写真・過去の投稿・所属など、あなたと結びつく情報が写っている画面も一緒に保存しておくと役立ちます。

URLは特に重要:どのページの投稿かは、画面に写ったURLで特定します。URLのない画像や印刷物では、その投稿がどこにあったのかを示しづらくなります。警察の案内でも、投稿番号や閲覧方法まで残すよう示されています。URLと日時は必ず画面に入れて保存してください。

3スクリーンショットの正しい撮り方

撮り方ひとつで、証拠としての価値が変わります。次の手順を意識してください。

  • URL(アドレスバー)ごと撮る:どのページの投稿かが分かるように、ブラウザのアドレスバーを画面に入れて撮影します。アプリの場合は、投稿の共有メニューからURLをコピーして別途控えます。
  • 日時が分かるように撮る:投稿に表示された日時に加え、端末の時計表示も一緒に写ると、いつ保存したかの裏づけになります。
  • 全文と全体像を撮る:本文が長くて1画面に収まらないときは、スクロールしながら重複させて連続で撮り、切れ目がないようにします。ページ全体を1枚に収めるフルページ保存や、画面録画(動画)も有効です。
  • アカウント・プロフィールも撮る:投稿者のユーザーページ・プロフィールも保存し、誰の投稿かをたどれるようにします。
  • 元データを上書きせず保存する:撮った画像・動画は加工せず、元のファイルを上書きしないまま複数の場所(端末・クラウド・印刷)に控えます。あわせて、いつ・どの方法で・どのURLから・誰が保存したかを記録しておくと、あとで「改ざんしていない」ことを説明しやすくなります。

良い残し方

  • URL・日時・アカウント・本文・文脈がすべて写っている
  • 全体像と、読める大きさの拡大の両方がある
  • 加工せず、撮ったままを複数箇所に保管している

避けたい残し方

  • 本文の一部だけを切り取り、前後の文脈が分からない
  • 文字を書き込む・塗る・トリミングして加工している
  • URLも日時もなく、どの投稿か特定できない

4時間との闘い──通信記録には保存期限がある

投稿者を特定するには、投稿時のIPアドレスなどの通信記録(発信者情報)をたどる必要があります。ところが、この記録の保存期間を定めた法律はなく、事業者が任意で保存しているにすぎません。保存される期間は長くても数か月程度とされ、短い場合には通信会社のIPアドレスの記録が3か月ほどで消えてしまうこともあり、掲示板などではさらに短いこともあります。記録が消えてしまうと、手続きを始めても投稿者にたどり着けなくなるおそれがあります。しかも、投稿が削除されると、それに対応する通信記録も一緒に消えてしまうことがあります

投稿者の特定は、通常コンテンツプロバイダ(サイト・SNS)アクセスプロバイダ(通信会社)の2段階で進みます。そのため、投稿を見つけたらできるだけ早く動くことが決定的に重要です。特定の手続きの流れは発信者情報開示請求とは(投稿者の特定)で解説しています。

だから「先に相談」が効きます:証拠を確保したら、削除より先に、あるいは削除と並行して、開示の手続きを検討します。弁護士に依頼すれば、投稿の削除と一緒に通信記録が消えないようプロバイダにログの保存を求めたり、裁判所に消去禁止命令(情報流通プラットフォーム対処法16条)を求めたりすることも検討できます。削除を急ぐあまり投稿だけ消して、特定の手がかりまで失う──これが最も多い失敗です。判断に迷ったら、記録が消える前にご相談ください。

5やってはいけない5つのこと

よかれと思ってした行動が、かえって不利になることがあります。

やりがちな行動なぜ避けるべきか
先に通報・削除依頼して消す投稿と一緒に、内容も投稿者の手がかりも失われる。確保が先
スクショを加工・トリミングする改変を疑われ、証拠としての信用が下がる。撮ったままで残す
相手に直接反論・言い返すやりとりが増えて炎上・拡散を招き、こちらの発言が問題化することも
「そのうち消えるだろう」と放置する拡散が進み、通信記録の保存期限も過ぎてしまう
自分で投稿者を詮索・特定しようとする誤った相手を名指しすれば、逆に責任を問われるおそれがある

6証拠力をさらに高める方法

スクリーンショットに加えて、次のような方法を使うと、証拠としての信用性を高められます。

ページを印刷して残す(URL・日時を表示して)

スクリーンショットに加えて、ページを印刷して残すのも有効です。このとき、手元に保存したファイルからではなく、インターネット上の公開ページを表示した状態から直接印刷し、ブラウザの設定で印刷日時とURLがヘッダ(余白)に出るようにしておくと、いつ・どのページを印刷したかが記録に残り、証拠として役立ちます。ただし印刷だけでは見た目が正しく再現されないこともあるため、スクリーンショットを主に、印刷は補助として併用します。

削除されてしまった投稿を取り戻す(アーカイブ・キャッシュ)

先に消されてしまった場合でも、あきらめないでください。過去のページを保存するウェブアーカイブ(Wayback Machineなど)や、検索エンジンが一時的に持つキャッシュに、削除前の内容が残っていることがあります。残っていれば、その内容を証拠として使える場合があります。ただし、すべてのページが保存されているわけではなく、記録の正確さが争われることもあるため、取得したときのURL・日時・表示内容もあわせて保存し、他の証拠と組み合わせて使うのが安全です。

画面録画(動画)で残す

投稿からプロフィール、URL、日時までを一続きで映した画面録画は、切り貼りしていないことを示しやすく、有効な補強になります。

公証人による事実実験公正証書

より確実な証拠化が必要な場合には、公証人に、その時点でそのページに投稿が存在することを確認してもらい、事実実験公正証書として残す方法があります。第三者である公証人が作成するため、証拠としての信用性が高い手段です。重要な事案では検討する価値があります。

弁護士からのひとこと

相談でいちばん多いのが「悔しくて、つい通報して消してもらいました」というケースです。気持ちは分かりますが、消えた投稿の内容と投稿者を後から取り戻すのは容易ではありません。逆に、URL・日時・アカウントまできちんと残っていれば、削除も特定もぐっと進めやすくなります。まず確保、それから対応。この順番だけは崩さないでください。迷ったら、消える前にご相談を。

7証拠を確保したあとの進め方

証拠がそろえば、状況に応じて次の手続きに進めます。どれを選ぶか、順序をどうするかは、投稿内容・拡散状況・相手の分かり方によって変わります。

  • 削除して被害を止める:まずは拡散を止めたいときは削除を検討します。方法はネット誹謗中傷を削除する方法で解説しています(削除と特定の順序に注意)。
  • 投稿者を特定する:損害賠償や謝罪を求めるには、まず投稿者の特定が必要です。発信者情報開示請求で進めます。
  • 損害賠償(慰謝料)を求める:特定できたら、民事で慰謝料などを請求します。相場観は誹謗中傷の慰謝料相場をご覧ください。
  • 刑事の責任を問う:悪質な場合は、名誉毀損罪(刑法230条)や侮辱罪(刑法231条)で刑事告訴を検討します。

どこに相談すればよいか迷うときは、誹謗中傷はどこに相談?弁護士・警察・専門窓口の選び方も参考にしてください。

8よくある質問

スマホのスクリーンショットでも証拠になりますか?

証拠にはなりますが、注意が必要です。とくにアプリの画面をスマホで撮ると、URLが表示されないことが多く、そのままでは「どのページの投稿か」を示しづらくなります。スマホで撮る場合は、共有メニューから投稿のURLを別途コピーして控えるか、可能ならパソコンのブラウザでURL・日時ごと撮るのが確実です。いずれの場合も、加工せず、撮ったまま複数箇所に保管してください。

URLが分からない投稿は、どう残せばいいですか?

アプリの共有メニューから投稿のリンクをコピーできることが多いです。難しい場合は、投稿画面・アカウント名・日時をできるだけ多く撮り、投稿にたどり着ける情報を残します。判断に迷う場合は弁護士にご相談ください。

相手にもう投稿を消されてしまいました。もう無理ですか?

あきらめる必要はありません。以前に撮ったスクショや、他の人が保存していた画面、キャッシュ・アーカイブが残っていることがあります。まずは手元にある材料をもとにご相談ください。

証拠はいつまでに集めればいいですか?

できるだけ早くです。投稿は削除・編集されうるうえ、投稿者をたどる通信記録にも保存期限があります。とくに特定を考えるなら、日単位で早いほど有利です。

スクショに自分で日付を書き込んでもいいですか?

おすすめしません。書き込みやトリミングは改変を疑われ、かえって証拠の信用を下げます。日時は投稿の表示や端末の時計を画面ごと写す形で残してください。

まとめサイトや別のSNSに転載された場合はどうしますか?

転載先も含めて、それぞれのURL・日時・画面を保存してください。拡散の範囲は被害の大きさを示す資料になり、削除や請求の対象を検討するうえでも重要です。

証拠がそろえば必ず投稿者を特定できますか?

特定できる可能性は高まりますが、確実ではありません。通信記録がすでに消えている場合や、公衆Wi-Fi・共用回線からの投稿など、特定が難しいケースもあります。だからこそ早期の確保と着手が重要です。

自分で進めるのと、弁護士に頼むのはどちらがいいですか?

確保の初動はご自身でも可能ですが、削除・開示・請求は期限や手続きが絡みます。何をどこまで残すべきか、どの順序で進めるかを含め、早い段階で弁護士に相談すると抜け漏れを防げます。難波みなみ法律事務所(大阪なんば・心斎橋)が初回相談30分無料で対応します。

証拠が消える前に、まずはご相談ください

誹謗中傷は、証拠の残し方と動く順序で結果が変わります。難波みなみ法律事務所が、証拠の確保のアドバイスから、削除・発信者情報開示・損害賠償・刑事までワンストップで対応します。初回相談30分無料。大阪なんば・心斎橋。夜間・土日祝も電話・メール・LINEで受け付けています。

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監修:難波みなみ法律事務所 代表弁護士 南 宜孝(大阪弁護士会)
大阪市中央区西心斎橋2-4-3 難波御堂筋ビル403/電話 06-6786-8103。ネット誹謗中傷について、証拠の確保の助言から、削除・発信者情報開示・損害賠償・刑事告訴までワンストップで対応しています。本記事は一般的な情報提供を目的とするもので、個別の事案の結論を保証するものではありません。

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