コラム
更新日: 2026.09.25

誹謗中傷はどこから?違法になる基準を弁護士が解説

難波みなみ法律事務所代表弁護士・中小企業診断士。大阪弁護士会所属(登録番号49544)、大阪中小企業診断士会所属(登録番号 420113)、幻冬舎「GOLDONLINE」連載第1回、15回、75回執筆担当。法的な問題には、法律の専門家である弁護士の助けが必要です。弁護士ドットコム、ココナラ、弁護士ナビに掲載中。いつでもお気軽にご相談ください。初回相談無料(30分)。

誹謗中傷 どこからが違法になる? 名誉毀損・侮辱・プライバシー侵害の境界線
誹謗中傷

「これって誹謗中傷では?」と感じても、ネット上の書き込みがすべて違法になるわけではありません。法的に問題となる「違法な誹謗中傷」は、名誉毀損・侮辱(名誉感情の侵害)・プライバシー侵害の大きく3つに整理できます。この記事では、どこからが違法になるのか、正当な批判との境目はどこか、そして書かれた側・書いてしまった側それぞれの対処までを弁護士が解説します。

結論から

誹謗中傷はどこからが違法になりますか?

違法になるのは主に3つの型です。①社会的評価を下げる事実を公然と示す「名誉毀損」、②事実を示さなくても公然と人をおとしめる「侮辱(名誉感情の侵害)」、③私生活の情報を暴露する「プライバシー侵害」です。単なる感想や、根拠のある正当な批判は、原則として違法にはなりません。

正当な批判と違法な誹謗中傷の境目はどこですか?

境目は「公共性・公益目的・真実(または真実と信じる相当な理由)があり、意見・論評として節度を保っているか」です。これらを満たす批判は適法になりやすく、逆に、虚偽の事実、人格そのものへの攻撃、私生活の暴露に踏み込むと違法に傾きます。

書かれた側・書いてしまった側は、どうすればいいですか?

書かれた側は、消す前にスクリーンショットで証拠を残し、削除・投稿者の特定・相談へ進みます。書いてしまった側は、早めに削除・謝罪・示談を検討し、開示請求や損害賠償の通知が届いたら放置せず弁護士に相談してください。

1「誹謗中傷」と「違法な誹謗中傷」は同じではない

「誹謗中傷」という言葉は法律用語ではなく、他人を悪く言う書き込み全般を指す日常語です。これに対して、法的責任(損害賠償や刑事罰)が発生する「違法な誹謗中傷」は、要件を満たしたものに限られます。腹の立つ書き込みでも、法的にはセーフということは珍しくありません。

逆に、「本当のことだから大丈夫」「名前を出していないから平気」と思って書いた投稿が、違法と判断されることもあります。まずは、法的に問題となる3つの型を押さえるのが出発点です。

2違法になる3つの型

ネット上の書き込みが違法とされる主な類型は、次の3つです。どれに当たるかで、対処や請求できる内容が変わります。

類型成立の核主な根拠刑事/民事
名誉毀損公然と具体的な事実を示して社会的評価を下げる(例:「○○は不倫している」)。事実が真実かどうかを問わず成立しうる刑法230条/民法709条・710条両方
侮辱(名誉感情の侵害)事実を示さず、公然と人をおとしめる(例:「バカ」「気持ち悪い」等の人格否定)刑法231条/民法709条・710条両方
プライバシー侵害公開されていない私生活の情報を暴露する(住所・病歴・家族関係・過去の経歴など)民法709条・710条主に民事

ポイントは、「事実を示すかどうか」で名誉毀損と侮辱が分かれることです。具体的な出来事を挙げて評価を下げれば名誉毀損、事実抜きの人格否定なら侮辱に近づきます。いずれも、刑事責任(処罰)と民事責任(損害賠償)は別々に問題になります。

2つ、押さえておきたい点があります。1つは、プライバシー侵害は、書かれた内容が真実であっても成立することです。名誉毀損が「真実なら免責されうる」のとは逆で、住所・家族・病歴・過去といった知られたくない私生活を、本当のことだからと公開すること自体が問題になり、公開されない利益と公開する必要性を比べて(比較衡量して)違法かどうかが判断されます。もう1つは、事実を示さない侮辱(名誉感情の侵害)は、単に不快というだけでなく、社会通念上がまんできる限度を超えたときに違法と評価される、という点です。

3大前提:その投稿が「あなたのこと」と分かるか(同定可能性)

名誉毀損やプライバシー侵害が成立するには、その投稿が誰のことを書いたものか特定できること(同定可能性)が前提になります。誰のことか分からなければ社会的評価の低下も被害も生じないため、同定可能性が認められないと、削除請求・発信者情報開示請求・損害賠償請求のいずれも認められません。「名前を書いていないから大丈夫」と思われがちですが、判断は名前の有無では決まりません。

基準は「国民一般」ではなく「その人の周囲の人」から見て分かるか

同定可能性は、投稿を一般の読者が普通の注意と読み方で読んだときに、誰のことか分かるかで判断されます(最高裁 昭和31年7月20日)。ここで大切なのは、国民全員がその人を知っている必要はないという点です。対象になった人の知人や、その人の属性の一部を知る人にとって「あの人のことだ」と分かれば足ります。国民一般に分かることを求めると、著名人以外は救済されなくなり不当だからです。無名の一般の方でも保護されます。

名前がなくても肯定、フルネームでも否定されうる

基本の考え方は、同姓同名の別人(法人なら同じ商号の別法人)の可能性を排除でき、特定の一人(一社)だと分かるかです。所属・肩書・属性で1人に絞り込めれば、名前が書かれていなくても同定可能性は認められます。逆に、フルネームが書かれていても、同じ属性の同姓同名の人がいれば否定されることがあります(東京高裁 平成27年3月12日)。

伏せ字・当て字・ハンドルネームでも同じです。同じスレッドの他の書き込みや、投稿がされた経緯まで考慮して判断されるため(最高裁 平成22年4月13日)、スレッドの流れを読めば誰のことか分かるなら肯定されます。仮名でも、実名と似ていて経歴などが詳しく書かれ、本人と推知できる場合も同様です(最高裁 平成15年3月14日)。ハンドルネームやSNSアカウントでは、フォロワーに実社会の知人が多数いる、プロフィール写真が本人であるといった事情から、実社会のその人と結びつくかがポイントになります。

立証のコツと、侮辱の例外:同定可能性は、投稿本文だけでなく、同じスレッドの他の投稿、ネットで簡単に検索できる別ページの記載、本社所在地・URLなどの周辺情報を幅広く付け合わせ、「該当するのは自分(自社)しかいない」と示していきます。書かれた側は、消す前にこうした関連情報もあわせて保存しておくと有利です。なお、事実を示さない侮辱(名誉感情の侵害)は、本人の内面が問題となるため同定可能性は必須の要件ではなく、公然性のない一対一のやりとりでも成立する余地があります。ただし、自分とまったく無関係な投稿では被害を認めがたいため、自分が被害者だと合理的に説明できることは必要です(福岡地裁 令和元年9月26日)。

4具体例で見る「違法ライン」

抽象的な要件だけではイメージしづらいので、違法に傾きやすい例と、原則として問題になりにくい例を並べます。実際の判断は文脈次第ですが、線引きの感覚をつかむ目安になります。

違法に傾きやすい

  • 「○○は客の金を横領している」など、具体的な事実で評価を下げる
  • 「詐欺師」「犯罪者」と、根拠なく決めつける
  • 「ブス」「消えろ」など、人格を否定する言葉の投げつけ
  • 本人の住所・勤務先・家族など私生活の情報をさらす
  • 虚偽の内容を、事実であるかのように拡散する

原則セーフになりやすい

  • 「この店の対応は自分には合わなかった」といった個人の感想
  • 商品・サービスへの、事実に基づく節度ある批評
  • 公人の公的な活動に対する、根拠を伴う論評
  • 誰のことか特定できない一般論・つぶやき

「セーフになりやすい」ものでも、表現が過激化して人格攻撃や虚偽に踏み込めば違法に転じます。反対に、一見きつい批判でも、事実に基づく正当な論評であれば責任を問われないことがあります。

5「事実の摘示」か「意見・論評」かで判断が変わる

名誉毀損は、事実を示して評価を下げる「事実摘示型」と、意見・論評によって評価を下げる「意見論評型」に分かれます。どちらに当たるかで違法にならない(免責される)条件が変わるため、まず「その表現が事実の摘示か、意見・論評か」を見分けることが出発点です。見分ける基準は、一般の読み方を基準にして、証拠で本当かどうかを決められる事柄かどうかです(「Aが会社の金を使い込んでいる」は事実の摘示、「Aはうさんくさい」は意見・論評)。

事実を示した場合(事実摘示型)

次の3つをすべて満たすと、名誉毀損の責任を負いません(刑法230条の2。民事でも同様の枠組みが判例で認められています。最高裁 昭和41年6月23日)。

  • 公共性:その事実が、社会一般の関心・利益にかかわること。
  • 公益目的:もっぱら公益をはかる目的で書かれていること(私怨や嫌がらせが目的でない)。
  • 真実性・相当性:内容が真実であること。真実と証明できなくても、真実だと信じる相当な理由があれば責任を免れます。

意見・論評だった場合(意見論評型・公正な論評)

意見や論評でも、社会的評価を下げれば名誉毀損になりえます。ただし、次の4つを満たせば違法とはされません(最高裁 平成9年9月9日、平成16年7月15日)。意見を述べる自由が表現の自由の根幹として厚く保障されるためです。

  • 公共性:公共の利害に関する事柄についての論評であること。
  • 公益目的:もっぱら公益をはかる目的であること。
  • 前提事実の真実性:論評の前提とした事実が、重要な部分で真実(または真実と信じる相当な理由あり)であること。
  • 論評の域を逸脱しない:人身攻撃に及ぶなど、意見・論評としての域を超えていないこと。

とくに、体験にもとづく口コミ・レビューは「意見・論評」と受け取られやすく、その場合は前提とした体験が本当にあったかが争点になります。逆にいえば、意見・感想の形をとっていても、①前提にした事実が虚偽である、②人格攻撃にまで踏み込んでいる場合は違法に傾きます。「違法だ」「詐欺だ」といった評価的な決めつけも、その前提とした事実が虚偽であれば責任を問われることがあります。

注意:「本当のことを書いただけ」でも、公共性・公益目的がなければ名誉毀損は成立しえます。真実であることは、それ単独では免責の理由になりません。

6刑事罰との関係と、匿名でも特定される仕組み

違法な誹謗中傷には、刑事責任(処罰)と民事責任(損害賠償)の両方がありえます。刑事では、事実を示した場合の名誉毀損罪(刑法230条/3年以下の拘禁刑または罰金)、事実を示さない侮辱の場合の侮辱罪(刑法231条/1年以下の拘禁刑または罰金など)が中心です。侮辱罪は2022年(令和4年)の法改正で厳罰化され、公訴時効も3年に延びました。なお、これらの刑は2025年6月の刑法改正で「拘禁刑」に一本化されています。

名誉毀損罪・侮辱罪はいずれも親告罪で、原則として被害者の告訴が必要です。刑事手続きの詳細は名誉毀損罪・侮辱罪で刑事告訴するにはで解説しています。

また、匿名の投稿でも「泣き寝入り」とは限りません。投稿者の名前が分からなくても、発信者情報開示という手続きで投稿者を特定できる場合があります(→発信者情報開示請求とは)。この開示や削除を求める前提として、その投稿が誰のことを書いたか(前章の同定可能性)が認められることが必要です。

7書かれた側・書いてしまった側の対処

書かれた側(被害を受けた方)

まず、消す前に証拠を残すことが最優先です。投稿のスクリーンショット(URL・日時がわかる形)を保存してから、削除や投稿者の特定に進みます。

どこに相談するか迷うときは、相談先を目的別に整理した誹謗中傷はどこに相談?もご覧ください。

書いてしまった側(加害者になりうる方)

「つい書き込んでしまった」「開示請求の通知が届いた」という場合も、放置は禁物です。時間の経過とともに拡散や証拠化が進み、特定・請求のリスクが高まります。早い段階での削除・謝罪・示談が、被害の拡大と賠償額を抑えるうえで有効です。

弁護士からのひとこと

「これくらいは大丈夫だろう」という自己判断が、いちばん危険です。違法かどうかは、言葉の強さそのものよりも、事実を示したか・その裏付けがあるか・私生活に踏み込んだかで決まります。書かれた側も書いた側も、感情的に動く前に、まず証拠を保全して、早めに弁護士に見通しを聞いていただくのが結局は近道です。

▶ ネット誹謗中傷の削除・発信者特定・損害賠償はこちら(削除・特定・損害賠償・刑事告訴の全体像と弁護士費用の一覧)

8よくある質問

誹謗中傷はどこからが違法ですか?

社会的評価を下げる事実を公然と示す名誉毀損、事実を示さず公然と人をおとしめる侮辱、私生活を暴露するプライバシー侵害のいずれかに当たると違法になりえます。単なる感想や、事実に基づく正当な批判は原則として違法ではありません。

悪口を書かれたら必ず名誉毀損になりますか?

なりません。名誉毀損は、具体的な事実を公然と示して社会的評価を下げた場合に成立します。事実を伴わない悪口は、侮辱(名誉感情の侵害)として別に問題になることがあります。

本当のことを書いても名誉毀損になりますか?

なりえます。真実であることだけでは免責されず、公共性・公益目的・真実性の3つがそろって初めて責任を免れます。私的な事情を晒す投稿は、真実でも違法と判断されることがあります。

本当のことでも、住所や家族のことを書かれたら違法ですか?

違法になりえます。住所・家族・病歴・過去など、知られたくない私生活の情報を公開することは、内容が真実であってもプライバシー侵害になりえます。公開されない利益と公開する必要性を比べて判断されます。

「バカ」「気持ち悪い」などの言葉だけでも罪になりますか?

なりえます。事実を示さない人格否定は侮辱に当たり、公然性があれば侮辱罪や民事の損害賠償の対象になります。侮辱罪は2022年の改正で厳罰化されています。

名前を出していない投稿や匿名の投稿でも違法になりますか?

なりえます。イニシャルや伏せ字でも、周辺情報から本人が特定できれば(同定可能性があれば)違法です。匿名でも、発信者情報開示の手続きで投稿者を特定できる場合があります。

同定可能性はどのように判断されますか?

対象になった人の周囲の人(知人や、その人の属性を知る人)にとって、その投稿がその人のことだと分かるかで判断されます。国民一般が知っている必要はなく、同姓同名の別人を排除でき「その人しかいない」と分かれば、名前が書かれていなくても認められます。伏せ字やハンドルネームでも、スレッドの流れや周辺の情報から本人が分かれば同定可能性は肯定されます。

口コミやレビューへの批判は誹謗中傷になりますか?

事実に基づく節度ある批評であれば、原則として違法ではありません。ただし、虚偽の事実を書いたり、人格攻撃や私生活の暴露に踏み込むと違法に傾きます。

誹謗中傷を書いてしまいました。訴えられますか?

内容によっては、削除・損害賠償の請求や刑事告訴の対象になりえます。早めに投稿を削除し、謝罪や示談を検討してください。開示請求や賠償の通知が届いたら、放置せず弁護士に相談することをおすすめします。

誹謗中傷にはどのような刑事罰がありますか?

事実を示した名誉毀損は名誉毀損罪(刑法230条)、事実を示さない侮辱は侮辱罪(刑法231条)が中心です。いずれも親告罪で、被害者の告訴が原則必要です。刑事罰だけでは投稿の削除や賠償までは実現しません。

違法かどうか判断できないときは、どこに相談すればよいですか?

弁護士への相談が確実です。難波みなみ法律事務所(大阪なんば・心斎橋)が、違法性の見立てから削除・発信者情報開示・損害賠償までワンストップで対応します。電話・メール・LINEで受け付けています。

「これは違法?」の判断に迷ったら、まずご相談ください

書かれた側の被害回復(削除・投稿者の特定・損害賠償)も、書いてしまった側の早期対応も、難波みなみ法律事務所がワンストップで対応します。初回相談30分無料。大阪なんば・心斎橋。夜間・土日祝も電話・メール・LINEで受け付けています。

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監修:難波みなみ法律事務所 代表弁護士 南 宜孝(大阪弁護士会)
大阪市中央区西心斎橋2-4-3 難波御堂筋ビル403/電話 06-6786-8103。ネット誹謗中傷について、削除・発信者情報開示・損害賠償といった民事の対応を行っています(刑事事件そのものの受任は行っておりません)。本記事は一般的な情報提供を目的とするもので、個別の事案の結論を保証するものではありません。

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