交通事故でまだ痛みが残っているのに、保険会社から「そろそろ治療費を打ち切ります」と言われて不安になっていませんか。治療をやめるしかないのか、これからの治療費はどうなるのか——とても心配なところです。
この記事では、治療費を打ち切られたときに何をすればよいかを、大阪の被害者側の弁護士が順を追って説明します。
結論から
Q. 治療費を打ち切ると言われたら、治療はやめないといけませんか。
やめる必要はありません。「打ち切り」は、保険会社が病院への立替払い(一括対応)をやめるという通告にすぎず、治療の終了や症状固定を決めるものではありません。治療を続ける必要があるかどうかは医学的に判断されるもので、保険会社が決めることではありません。医師が必要と判断すれば、治療は続けられます。
Q. 打ち切られた後の治療費はどうすればいいですか。
健康保険に切り替えて自己負担を抑えつつ、治療を続けるのが基本です。交通事故でも健康保険は使えます(「第三者行為による傷病届」を提出します)。立て替えた分は領収書と診療明細を保管しておき、あとで示談や自賠責への被害者請求でまとめて回収します。
Q. まず何をすればいいですか。
①主治医に「治療を続ける必要があるか」を確認し、必要なら②保険会社に延長を求め、それでも打ち切られたら③健康保険に切り替えて通院を継続、④領収書を保管します。すでに症状が固定している段階なら、後遺障害の申請に切り替えます。迷ったら早めにご相談ください。
まず知っておく:「打ち切り」は治療終了の決定ではない
保険会社の「打ち切り」とは、加害者側の任意保険会社が病院へ治療費を直接支払っていた一括対応(一括払い)をやめるという通告です。一括対応は保険会社が任意で行っているサービスで、法律上の義務ではありません。だからこそ、保険会社の都合で打ち切られることがあります。
大切なのは、打ち切り=治療終了・症状固定ではないということです。治療を続ける必要があるか(=これ以上よくならない「症状固定」に達したか)は、本来は医学的に判断されるものであり、保険会社が決めるものではありません。打ち切りを告げられても、医師が治療の必要を認めているなら、治療を続けることができます。症状固定と打ち切りの違いは、別の記事でくわしく説明しています。
打ち切られたときの5つのステップ
健康保険への切り替え(くわしく)
「交通事故では健康保険は使えない」と思っている方が多いのですが、使えます。手続きは、加入している保険者に「第三者行為による傷病届」を提出するだけです。交通事故など他人の行為でケガをして健康保険を使うときは、この届出が必要とされています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 窓口の負担 | 原則3割(自由診療より大きく抑えられる) |
| 必要な届出 | 第三者行為による傷病届(保険者へ) |
| そのあとの流れ | 保険者が立て替え、あとで加害者側に求償する |
| 注意点 | 健保診療だと、自賠責所定の診断書や後遺障害診断書を書いてもらえないことがあるため、病院に事前確認する |
立て替えた治療費を回収する方法
打ち切り後に自分で払った治療費は、必要かつ相当なものであれば、あとから回収できます。主な方法は次のとおりです。
| 方法 | ポイント |
|---|---|
| 自賠責への 被害者請求 |
立て替え分を先に回収できる(自賠法16条1項)。傷害分は120万円が上限で、すでに保険会社が一括払いした分はその枠から差し引かれる |
| 自賠責の 仮渡金 |
加害者の責任がまだ確定していなくても、当座の治療費などにあてる一時金を先に受け取れる(自賠法17条)。あとで最終の賠償額と精算する |
| 人身傷害 補償保険 |
自分の自動車保険に付いていれば、過失にかかわらず治療費などを受け取れることがある。使っても等級は下がらないとされる |
| 示談・訴訟で まとめて請求 |
治療終了後、治療費・慰謝料などをまとめて加害者側に請求する |
自賠責への被害者請求は、立て替えが続いて生活が苦しいときに有効です。手続きや必要書類は、自賠責の被害者請求とはでくわしく説明しています。医師が治療の必要を認めているのに保険会社が支払いに応じないときは、これらに加えて、裁判所に仮払いの仮処分を求めるなど、さらに踏み込んだ手段を検討できる場合もあります。
症状固定の段階なら、後遺障害の申請へ
打ち切りを告げられたタイミングが、医学的にみてすでに症状固定に近いこともあります。これ以上治療を続けても大きな改善が見込めない段階であれば、治療の延長よりも、残った症状について後遺障害の認定を受けることを考えます。後遺障害が認定されれば、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できます。
なお、症状固定後の治療費は原則として加害者に請求できません(残った症状は後遺障害として評価されるためです)。ただし、症状の悪化を防ぐために必要な治療など、支出が相当と認められる場合には、例外的に症状固定後の治療費が認められた裁判例もあります。
後遺障害の認定の流れは後遺障害認定とはを、非該当だったときの進め方は後遺障害の異議申立てをご覧ください。
やってはいけないこと・注意点
自己判断で通院をやめないこと。「打ち切られたから」と通院をやめてしまうと、症状が続いていることを示す記録が途切れ、慰謝料が減ったり後遺障害が認定されにくくなったりします。続ける必要があるなら、健康保険に切り替えてでも通院を続けるのが基本です。通院の頻度・期間も、慰謝料や後遺障害に関わります。
必要性・相当性のない治療は、あとで否定されることがあります。回収できるのは「事故によるケガの治療として必要かつ相当」な範囲です。過剰・過度な治療と見られると、その分は認められないことがあります。医師の判断にそって、必要な治療を続けることが大切です。
治療費を打ち切ると言われたとき、延長交渉・健康保険への切り替え・立替分の回収・後遺障害の見通しまで、大阪市・なんば・心斎橋の難波みなみ法律事務所でご相談を承ります。初回相談は30分無料、LINE・Zoom相談や土日祝・夜間にも対応しています。
よくある質問
保険会社に治療費を打ち切ると言われたら、治療をやめないといけませんか。
やめる必要はありません。打ち切りは、保険会社が病院への立替払い(一括対応)をやめる通告にすぎず、治療終了や症状固定を決めるものではありません。医師が治療の必要を認めているなら、健康保険に切り替えてでも治療を続けることができます。
交通事故の治療に健康保険は使えますか。
使えます。加入している保険者に「第三者行為による傷病届」を提出すれば、窓口負担を原則3割に抑えて通院を続けられます。労災に当たる事故なら労災保険を使える場合もあります。健保診療だと自賠責所定の診断書を書いてもらえないことがあるため、病院に事前確認してください。
打ち切られた後に立て替えた治療費は戻ってきますか。
事故によるケガの治療として必要かつ相当なものであれば、あとから回収できます。立て替え分は自賠責への被害者請求で先に回収するか(傷害分は120万円が上限で、一括払い済みの分は差し引かれます)、示談のときにまとめて請求します。領収書と診療明細を保管しておいてください。
まだ痛いのに打ち切られました。延長はできますか。
できる場合があります。症状固定にはまだ早いのに打ち切られたときは、主治医の意見や診断書で治療の必要性を示して、保険会社に延長を求めます。実際に延長が認められることもあります。医学的な根拠を示すことがポイントです。
打ち切り日が症状固定日になってしまうのですか。
そうとは限りません。打ち切り日と症状固定日は別のものです。ただし実務では、打ち切られた日がそのまま症状固定日として扱われてしまうことがあります。症状固定の時期は慰謝料や後遺障害の判断に関わるため、医師とよく相談して決めることが大切です。
打ち切られたら、後遺障害はもう申請できませんか。
申請できます。むしろ、これ以上治療を続けても改善が見込めない段階なら、後遺障害の申請に進むのが適切です。後遺障害が認定されれば、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できます。症状の連続性を示すため、申請の前提となる通院記録を途切れさせないことが大切です。
人身傷害保険は使えますか。
自分の自動車保険に人身傷害補償保険が付いていれば、過失の有無にかかわらず治療費などを受け取れることがあります。使っても自動車保険の等級は下がらないとされています。打ち切りで立替が苦しいときの選択肢の一つです。
打ち切られたらすぐ弁護士に相談したほうがよいですか。
早めの相談をおすすめします。延長交渉や健康保険への切り替え、立替分の回収、後遺障害の見通しは、タイミングを逃すと不利になることがあります。弁護士費用特約があれば費用は保険でまかなえる場合が多く、初回相談は無料です。
本記事は一般的な解説です。治療の継続の要否や、治療費の回収の可否・方法は、ケガの内容・治療経過・保険の加入状況によって異なります。具体的な事案は弁護士にご相談ください。






